サウディアは2022年10月26日、サウジアラビアの非営利団体である未来投資戦略(FII:Future Investment Initiative)研究所が首都リヤドで開催した国際会議において、独リリウムとの覚書に署名したことを発表した。リリウムは、空飛ぶタクシーを開発するナスダック上場企業だ。
これによりサウジアラビアでは、2地点を結ぶ定期便と、同社ハブ空港行き便という国内航空路線網が実現する可能性がある。このサービスは、ビジネスクラスを利用する顧客層をターゲットとしたものになりそうだ。
ドイツに本社を置くリリウムはまず、サウジアラビア当局からの承認が必要だ。実際にeVTOLジェット機が国内を飛び回るのは、そのあとになる。
サウディアの最高経営責任者(CEO)イブラヒム・アルコーシー(Ibrahim Koshy)機長は、リリウムとの取り決めによって「ゼロエミッション航空機が導入されれば、サウジアラビアにおけるサステナブルな観光が効果的に促進される」可能性があると述べた。
リリウムが中東で覚書を交わすのは、今回が初めてだ。とはいえ、今回の合意はあくまで覚書であって、正式契約ではない。つまり、実際に合意が実現に向かうかどうか、現段階では保証はない。両社は今後、実現が可能かどうかを見極め、商業的な条件に合意する必要がある。
他のeVTOLメーカーも、将来性を秘めたペルシャ湾岸市場に食指が動いている。中国の電気自動車スタートアップ、シャオペン(小鵬汽車)は10月10日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、空飛ぶクルマ「シャオペンX2」の初の公開飛行実験を90分間にわたって行った。シャオペンX2は2人乗りで、最高速度は時速130kmだ。
リリウムはこれまでにも、欧州の潜在的な顧客と数々の取引を発表している。例えば、ビジネス用ジェット機を運航するASLグループ(ASL Group)や、スペインのヘリティ・コプター・エアラインズ(Hélity Copter Airlines)、ノルウェーのAAPアビエーション・グループ(AAP Aviation Group)などだ。しかし、サウディアとの取引は、それらと比べて規模がずっと大きい。
とはいえ、eVTOLが実際に空を飛び始める時期については、いまだに議論が続いている。コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、「進歩的なエア・モビリティ運営会社各社」は2030年までに、保有機数という点で世界最大手の航空会社各社と張り合えるようになる可能性があるという。
しかし、eVTOLの実際の飛行時間は極めて短く(平均でわずか18分)、乗客数もかなり少なくなるとみられる。搭乗できるのは、パイロット1人のほかに、乗客が4人から5人だけとなりそうだ。
(forbes.com 原文)