より良い社会の構築を目指し挑戦を続ける、アントレプレナーシップにあふれた経営者たちを2001年度から欠かすことなく表彰してきたアワード、それが「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン(以下、EOY Japan)」だ。開催から22回を迎え、他に例を見ない希有な歴史と存在感をもつこのアワードの全貌を改めて紹介する。
Building a better working worldの実現に向けて
「EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」の歴史は1986年、米国ウィスコンシン州の都市であるミルウォーキーから始まった。その後全米へと開催規模を拡大していくなかで、現在の米国ビジネス界を代表するアントレプレナーを多数輩出することになる。
世界における主な受賞者
1989年 マイケル・デル氏(デルコンピュータ・コーポレーション)
1991年 ハワード・シュルツ氏(スターバックスコーポレーション)
1997年 ジェフ・ベゾス氏(アマゾン・ドットコム)
2003年 セルゲイ・ブリン氏/ラリー・ペイジ氏(グーグル)
この面々を見てわかる通り、社会に新たな価値を創出してきたアントレプレナーたちが表彰の対象となっている。彼らの成功までの道のりと、さらなる成長や社会課題解決のための飽くなき挑戦をたたえ、紹介することで次世代のアントレプレナーの輩出に貢献していく、というのがこのアワードの究極的な目的である。このように、短期的ではなく「長期的価値(Long-term value、LTV)」をもたらすアントレプレナーをたたえることが、EYのパーパスである「Building a better working world~より良い社会の構築を目指して」の実現につながるのだ。
表彰までの過程とその先を見据えるEOY Japan
米国で始まったEOYのスピリットを受けて、日本では2001年度から表彰を開始。ただ表彰するだけではなく、選考過程やメディアインタビュー、アワードセレモニーを通して受賞者自身がアントレプレナーとしてのストーリーを振り返る機会にしているほか、それらを発信することで、さらなる成長の足掛かりになることを期待している。
また、歴代受賞者が集うコミュニティー「EOY Japan Alumni」は、定期的に経営者同士の悩みを共有し、解決のヒントを得るほか、新たなビジネス機会を見いだす場にもなっている。日本を代表する企業の経営者たちが集うこのコミュニティの一員になることも、受賞の大きな価値の一つだ。
2020年度にはEOY Japan Alumniのオンラインお悩み質問会が開催された。写真は審査委員の冨山和彦氏が会場で相談に応える様子
また、日本における特徴の一つが地区大会である。北海道から九州まで、革新的な技術やイノベーションをもつ企業、あるいはその地域に長期的な価値を提供する企業にスポットライトを当てる。毎年、地区ごとに光る企業を発見できることも、EOY Japanのもつ価値だろう。
日本におけるEOYの特徴
① 地区アワードセレモニー
② EOY Japan Alumni(受賞者ネットワーク)
③ 受賞者メディアインタビュー
「長期的価値」を生む経営者を選ぶ、独自の選考基準
それでは、どのような経営者が選ばれるのか。選考基準のうち、一番先に目に飛び込んでくるのは「Long-term value(長期的価値)」という文字である。これをもたらす企業であるかどうかを見極める基準として、「アントレプレナー精神」「パーパス」「成長」「影響力」という4つの軸が設けられている。
Entrepreneurial spirit(アントレプレナー精神)
• より良い社会を創造するチャンスを見極めることができる
• ビジョンを実現するためにリスクを取っている
• 大きな障害や困難を乗り越えるための勇気、不屈の精神、立ち直る力を持っている
Purpose(パーパス)
• パーパスとビジョンのために、自らと組織が全力を注いでいる
• 持続可能な将来のビジネス戦略を推進している
• ステークホルダーやエコシステム(消費者、従業員、サプライヤー、政府、コミュニティ、投資家、株主など)
Growth(成長)
• 市場シェアを拡大し、新市場に進出している
• 高い業績を上げている
• 多様な人材を集め、育成し、保持するために投資をしている
• 新しい手法や技術の先駆者となるようなイノベーションを生み出す組織風土を構築している
Impact(影響力)
• サービスを提供するクライアントに良い影響を及ぼしている
• 強固なコミットメントや具体的な戦略に基づき、持続可能な環境・社会・ガバナンス(ESG)を実践している
• 多角的な視点を持って、ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)を積極的に推し進めている
これらの軸をもとに、歴代受賞者や事業経験が豊富な選考委員たちが白熱した議論を重ね、受賞者のなかから日本代表を選考する(Forbes JAPAN Web編集長 谷本有香は16年より選考委員を務める)。
エントリーは毎年5〜8月ごろに、EYの公式ページより受け付けられる。
EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン
世界中のアントレプレナーがモナコに集う
こうして日本のみならず、世界中に広がるEOYの価値をより高めるため、01年から「EY ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(以下、WEOY)」を毎年6月に開催している。世界60カ国145都市を超える国や地域から選出された代表のアントレプレナーをたたえ、“The best of the best”としてその年の世界を代表するアントレプレナーが選出される。その選出という一大イベントもさることながら、世界から国境を超えて集まった各国の代表がお互いを「同志」としてたたえ合い、交流する機会になることこそが、WEOYの大きな価値である。受賞後も交流が続くことも多いという。
アワードセレモニーでは出席者が一堂に会す
2021年度日本代表の旭酒造株式会社 会長 桜井博志氏はセレモニー前のAPACランチで獺祭を振る舞った。写真は2021年「EY World Entrepreneur of the Year™2021」に選ばれた韓国のセルトリオングループ 名誉会長 ソ・ジョンジン氏との交流の様子
世界の分断がニュースになる一方で、このように多くの国・地域で同じ志をもち、長期的価値を生むために挑戦を続けるアントレプレナーたちが存在し、顔を合わせ、思いを共有する機会があるということが、世界の結びつきを強める一助になるかもしれない。EOYから生まれる「より良い社会の構築」に今後も注目したい。
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