経済・社会

2022.11.02 10:00

ウクライナのエネルギーひっ迫は各国に迫る冬を予見させる

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ウクライナの国営電力会社は10月20日に、ロシアのミサイル攻撃による停電が予想されるため、国民に「すべての機器を充電するように」と警告した。

ウクライナを軍事力で征服しようとする試みで窮地に立たされたロシアのウラジミール・プーチン大統領はウクライナのインフラへの砲撃を開始した。ウクライナのエネルギー省によると、国際法に違反するロシアの攻撃により、ウクライナのエネルギーインフラの40%が損傷しているという。ウクライナ全土で毎日最大4時間の停電が予想されるため、市民は携帯電話、モバイルバッテリー、懐中電灯、バッテリーなどをすべて充電しておくよう勧告されている。

この冬、欧州で停電に備える国はウクライナだけではない。英国の送電・ガス供給会社National Grid(ナショナル・グリッド)は、欧州からのガス輸入が減少した場合、この冬の「本当に、本当に寒い」平日の午後4時から7時の間に停電となる可能性があると警告している。

最近の報道によると、英国放送協会(BBC)は英国が「大停電」に直面した場合に国民を安心させるための秘密の台本を用意しているという。一方、ドイツの政治家ヴォルフガング・ショーブレは、この冬はドイツでも電力が削減されるかもしれないため、セーターを2枚着て電力事情について泣き言はいわないよう地域の住民に語りかけた。また、米国でも北東部の電力網を管理するISO New England Inc(ISOニューイングランド)がこの冬の停電の可能性について警告を発した。

「本当に寒い」日こそ、人々が最も電力を必要とする日であることは言わずもがなだ。また、エネルギー供給が停止し、ロシアの戦争挑発に賛成しない子どもたちが凍える可能性があることは、プーチンの戦略的目標の1つであることに異論を挟む余地はない。戦争が当初の計画どおりにはいかず、プーチンはウクライナでの不運を何とか挽回しようとしている。つまり現実的には、西側諸国のエネルギーの脆弱性がウクライナで戦争と死と破壊が続いている一因と言える。このように、少なくとも部分的には原因が特定された以上、問題はそれにどう対処するかということだ。

欧州では環境への配慮から原子力、石油、ガスによる発電を早々と廃止する数十年にわたる計画を撤回することでこの問いに答え始めた。少なくとも答えようとしている。ドイツのような国々は絶望的な状況に陥り、古い石炭火力発電所を再稼働させ、環境面での懸念に関係なくエネルギーを確保するための措置を講じている。

しかし、何十年も前からクリーンな世界への移行をリードしてきたと自負するドイツでは、これは万人受けするものではない。オラフ・ショルツ首相は10月17日の週に、ロシアのウクライナでの戦争によって石炭の「世界的ルネサンス」を復活させてはならないと警告した。しかし、そのルネサンスをリードしているのが自国であることを考えるとシュルツの発言は奇妙に思えるが、この冬に国民に暖を取らせて食べさせるという差し迫った必要性と、地球規模で温室効果ガスの排出を削減するというより本質的で長期的な目標との間で多くの欧州の政治家が感じている不安の種を浮き彫りにしている。
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翻訳=溝口慈子

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