ビジネス

2022.11.02 10:30

エアークローゼット飛躍の原点は、創業期の「脱コンサル思考」にあり

CEOの天沼聰。エアークローゼットは「軽やかさ」を大事にする。オフィスにはそれを体現したブランコが置かれている(撮影=曽川拓哉)


「ファッション業界に馴染みのない男3人でスタートしているので、アパレルメーカーとのコネクション作りや、先ほどお話しした物流倉庫のパートナー開拓にも苦戦しました。
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サービス開始後も、『50人の壁』『100人の壁』などと言われているような問題は次々起こりました。経営トップへの意思決定の依存や、組織内のコミュニケーションの過疎化。さらに、役割分担を明確化することによって、役割以上のことがしづらくなってしまったり……。

自分たちも徹底的に先回りして考えて、予防線を張ってきたつもりだったのですが、スタートアップのあるある全てに陥りましたね」

なかでも、2020年のコロナ発生時は苦渋の決断を迫られた。「経営者として、サービス継続の必要性について考える日が来るなんて、予想もしていませんでした」と天沼は話す。
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取引しているブランド、メーカーは国内のみだが、生産過程で中国の工場と連携しているケースは多い。仕入れが困難になると、当然サービスの継続も難しくなる。また、シェアリングサービスというビジネスモデルが、感染拡大に繋がってしまう可能性への心配もあった。あらゆる不安を抱えながら、自社のサービスが社会に対してネガティブに作用してしまう要素があるならば「止めるべきだ」と覚悟もした。

感染症対策は専門家に相談するなど徹底していたが、サービス継続の判断は客観的に見ても「善」といえるかどうか。自分たちが提供したい価値を改めて自問自答する日々が続いたという。

最終的に決断の背中を押したのは、顧客からの感謝の声だった。

“医療従事者で仕事に行くのも不安ななか、エアークローゼットが、この素敵な服を着て出勤しよう!と自分の気持ちを切り替えてくれています。人生に彩りを与えてくれて、ありがとうございます”

「こうしたお客様からの声をたくさんいただきました。私たちが『お客様のライフスタイルを豊かにするような、ワクワクする体験を提供したい』と思ってはじめたサービスは、間違っていなかったし、ファッションの力は今だからこそ必要なのではないかと、強く感じられた瞬間です」

エアークローゼットの天沼社長

天沼は、サービス提供の継続を決定した。

日本初のサービスとして、服のレンタル市場を牽引してきたエアークローゼット。「顧客志向第一」の姿勢は、創業以来一切ブレていない。

「自分たちの提供している価値と、お客様が求めているものとにズレがないよう、軸をぶらさない。これが大事です。

『信念を貫く』というと聞こえがいいですが、諦めが悪いだけかもしれません(笑)。ただ、上場という形でも認めていただけたので、そこは自信を持って、取り組んでいきたいと思います」

文=小野瀬わかな 取材・編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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IPO起業家の 私たちが飛躍した瞬間

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