ビジネス

2022.11.02 10:30

エアークローゼット飛躍の原点は、創業期の「脱コンサル思考」にあり

CEOの天沼聰。エアークローゼットは「軽やかさ」を大事にする。オフィスにはそれを体現したブランコが置かれている(撮影=曽川拓哉)


そうして始まったレンタル事業には、パーソナルスタイリングを導入。プロ視点の提案は、新しい自分との出会いにもつながるほか、忙しい顧客が自分で洋服を探したり選んだりする手間をカットできる。また、返却期限や返却時のクリーニングなど、制限や面倒なプロセスもない。忙しい女性たちが、生活リズムを変えなくても、日々新鮮なファッションを楽しめるようなサービスとなっている。
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天沼は、「コンサル思考から脱却しなければ、この事業構想には至らなかった」と創業当時を振り返る。

「起業前に『なぜ創業するのか?』、3人で徹底的に話をしました。そして『自分たちが作りたいサービスではなく、必要とされるサービスを作りたい。だからお客様中心の志向でいよう』と決めました。

当時は普段着を扱う服のレンタルというビジネスが存在せず、創業メンバーも全員ファッション業界未経験。知り合いもいませんでした。コンサルのセオリーにはめ込んで事業を考えたり、当時持っていた人脈や資源を活用してビジネスを組み立てようとしたら、絶対に作れなかったサービスです。
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そういった意味で、自分たち起点ではなく、お客様を中心に置くと決めたことは、大きなターニングポイントだったかもしれません。実際に、ユーザーの声を聞き、アップデートし続けたことが成長に繋がっています」

ターニングポイント2 寺田倉庫との出会い


2014年の7月に創業した天沼らは、物流拠点を確保するべく、倉庫会社を何社も訪問した。しかし、当初は軒並み断られたという。

「レンタル」というサービス形態のため、アイテムの個品管理と返却プロセスを担える倉庫会社が必要だった。しかし他の小売やECの事業者には「返却」などの業務フローは無いため、倉庫会社にはそのオペレーションが整っていないことがほとんどだったのだ。

エアークローゼット

そんななか訪れたターニングポイントは、寺田倉庫との出会いだった。当時、寺田倉庫は「顧客から預かった荷物を開封する」という業界のタブーに挑み、個人顧客向けに個品管理サービスを展開しており、オプションでクリーニングサービスも提供していたのだ。

「寺田さんが『作ってみよう』とおっしゃってくださったので前に進みました。それがなかったら、サービスは開始できていなかったかもしれない。このタイミングで、事業会社とパートナーシップをしっかりと組めたのは重要な出来事でした」

その後会員数は順調に増加し、2016年には10億円弱を調達するなど、サービス拡大の一途を辿ってきた。

ターニングポイント3 コロナ禍サービス続行の意思決定


一見、順風満帆に見えるが、天沼は「失敗や苦労ばかりですよ」と笑いながら振り返る。
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文=小野瀬わかな 取材・編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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