今回は、7月29日に東証グロース市場へ上場した、エアークローゼットの代表取締役社長 兼 CEOの天沼聰(あまぬまさとし)。
同社は2014年に創業し、日本初の月額制ファッションレンタルサービスを2015年にローンチした。その新しさはサービス開始前から話題を呼び、事前登録には2.5万人が集まった。売り上げも着実に伸ばし続けており、2021年6月期には営業利益の黒字化も達成している。
11月1日の終値は625円。8月に発表した四半期決算では、2022年6月期の売上高は33億9000万円(前期比117%増)、純利益はマイナス3億7800万円。
そんなエアークローゼットを上場へ導いた天沼に、
1. 創業まで
2. 創業から3期目まで
3. IPOまで
それぞれの期間におけるターニングポイントと、その際の意思決定について聞いた。
ターニングポイント1 コンサル思考からの脱却
エアークローゼットは、天沼を含め3名全員がIT戦略コンサル出身者で始まった。事業構想時は「ITを使って加速度的に伸びていく、在庫を持たないサービスをやろう」と話していたという。
しかし実際に始めたのは、女性向けの月額制ファッションレンタル。当初の構想とは正反対ともいえるビジネスモデルだが、このサービスに行き着いた背景には「ライフスタイルの豊かさに繋がるサービスを提供したい」という想いがあった。
「事業アイデアは100以上ありました。飲食に特化した買い物代行サービスや、タクシーの乗り合いなど、シェアリングのアイデアが多かったですね。『時間の価値』を高められるサービスを提供したいと考えていました。
私は、父が早くに他界したことをうけ、『人生は有限である』と教わりました。時間は、全人類が平等に持っていますが、使い方や感じ方によってその価値は変わります。1分でも1秒でも多くワクワクできるように、時間価値を高めていくことが大切なのではと考えたんです」
そのためには何が必要か──。
天沼は「持続性のある感動体験」という観点から、衣食住のなかでも常に身につけているファッションに目をつけた。現在のサービスは、「オシャレを楽しむ時間や余裕がない」と悩む、忙しい女性たちの声から着想を得た。
「百貨店のフロアを見れば一目瞭然ですが、男性と女性とでは選択肢の多さが違いますよね。また、ライフステージの変化によって時間やお金の使い方も大きく変わる。女性のほうが、時間の価値に対する課題意識が強いと感じたんです。そこで、忙しくてもワクワクするお洋服にたくさん出会えるという体験の提供を考えました」