ビジネス

2022.11.02

交渉力を高め人間関係を円滑にする「フォーカスの力」

Getty Images

デイヴ・クレンショー(Dave Crenshaw)は、リンクトイン・ラーニングプラットフォームで最も人気のあるコースプロデューサーのひとりだ。専門は、生産的なリーダーシップ。オンライン講座や講演イベント、コンサルティングを通じて、クレンショーはリーダーたちにより生産性を高める方法を伝授している。効果的な時間管理のためのアドバイスはそのひとつだ。

ポッドキャスト「Negotiate Anything」は今回、クレンショーをゲストに迎え、マルチタスクの幻想や、「フォーカス」を活用してビジネスと人間関係を改善するためのツールやコツについて語ってもらった。

マルチタスクの幻想


マルチタスクが効果的な交渉に役立つかどうかには賛否両論あるが、クレンショーによればマルチタスクは、対話の極めて重要な局面においてネガティブな影響を及ぼしうる。マルチタスクは、ひとつの作業に集中するよりも時間がかかるうえに(時間は、交渉を成功に導くために不可欠な要素のひとつだ)、ミスやストレスが増え、人間関係の質を損なうことにもつながると、彼は説明する。

クレンショーは、マルチタスクはそもそもテクノロジーに由来する言葉であることを指摘しつつ、マルチタスクを行っているときの私たちの頭脳は、数十のプログラムを走らせ多数のブラウザ・ウインドウを開いた状態のコンピューターのようなものだと述べた。遅かれ早かれ動作が遅くなるのは当然のことだ。

「脳にもこれと同じ制約がある。私たちの脳が集中して実行できるのは、一度にひとつの作業だけなのだ」と、クレンショーは言う。「複数の作業を同時に実行しようとしても、実際にはマルチタスクではなく、スイッチタスクになる」

これはつまり、脳は複数作業の同時進行を最大限効率的におこなうために、単純に、ひとつの作業から別の作業へと頻繁に切り替えるということだ。これにより、それぞれの作業の完了は確実に遅くなってしまう。

スイッチタスクが人間関係に与える影響


スイッチタスクは、時間を浪費し、ストレスが溜まるだけではない。クレンショーの考えではスイッチタスクは、最も価値ある人間関係にも悪影響を与える可能性がある。

「スイッチタスクの最大のコストのひとつは、人との相互作用に与える影響だ」と、彼は言う。

クレンショーによれば、人はふつう誰かに面と向かって、「あなたのことはどうでもいい」とは言わないものの、会話のなかの仕草が、これと同じメッセージを相手に伝えてしまうことがある。

「誰かの話をうわの空で聞いているとき、あなたはその人に対して、その人の価値は、いま自分がかかりきりになっていることよりも低いと伝えている」と、クレンショーは語る。

人はしばしば、相手が会話に集中していないことに気づくものだ。ビジネスにおいてこのような出来事は、将来の業務上の関係に亀裂を生じさせかねない。日常生活においても、愛する人や大切な人を傷つけることになる。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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