多数の死傷者が発生したのは、地下鉄・梨泰院駅のそばにあるハミルトンホテル脇の幅3メートル余りの坂になった細い路地だった。事件直前の映像をみると、ハロウィーンを楽しむために集まった大勢の人が密集し、ほとんど身動きが取れないような状況になっていた。韓国メディアによれば、有名DJが路地沿いのクラブにいるという情報が伝わり、若い人たちが殺到したという情報もある。ソウル市に住む50代の知人は「新型コロナウィルスの感染防止のため、こうした集まりが許されるのは3年ぶり。路地のあちこちで踊ったり、写真を撮ったりする若者がたくさんいた。久しぶりに開放感を味わいたいという気持ちが悲劇に変わって、とても残念だ」と話す。
日本では2018年、渋谷のセンター街で若者たちが軽トラックを倒す事件が発生。警察当局や地元商店街が協力し、ハロウィーンの時期になると酒類の販売規制や歩道の混雑緩和を試みている。警視総監や内閣危機管理監を務めた米村敏朗氏は「要人警備や国際イベント警備に比べ、一番難しいのが、大勢の人が集まる雑踏警備だ。群衆が突然動き出すと、もう誰にも止められない」と語る。そのうえでのやるべき対策として、可能な限りの情報を集め、群衆が密集しやすい場所を特定し、さらに人の動きが突然動き出す原因を予想することを挙げる。
2001年に兵庫県明石市で開かれた花火大会の見物客が歩道橋上で転倒し、11人が亡くなった。歩道橋は花火大会の会場と駅を結ぶ動線上にあったため、密集が予測できる場所だった。また、都内で毎年7月に開かれる隅田川花火大会の場合、見物客が橋の上に集まることが予想できた。警察が人の流れを分断し、一定の人数ごとに機動隊が引率して橋を通行するように工夫した。