垂直農場では、従来型の農場よりも少ない肥料で作物の栽培が可能です。植物の根に直接施肥することができる垂直農場では、吸収されなかった肥料は再利用して循環させることができます。このことは、2022-23年度に肥料に1.05ラーククロールルピー(130億ドル)を予算計上したインドにおいて、大きな影響を及ぼすでしょう。インドは世界最大の尿素輸入国ですが、近年は尿素の価格が急騰しているためです。
垂直農法のコスト
一方で、垂直農場の設立には多額の設備投資を要します。設備の種類にもよりますが、基本価格は通常、土地1エーカー当たり60~70ラークルピー(7万2000~8万5000ドル)程度で、完全自動化設備は1.5クロールルピー(18万2000ドル)にもなることがあります。
また、追加のエネルギーを必要とする場合、そのコストは総事業費の最大40%に達する可能性もあるほか、水による感染病リスクもあります。
生産者を支援するため、インド国立園芸局(National Horticulture Board)は、商業園芸プロジェクトの開発に、クレジットリンク型の補助金を支給しています。農業インフラ基金では、垂直農場設立のための長期借入融資制度を提供しています。
この取り組みはまだ始まったばかりですが、消費者への直販によって高い利益を得られるのではと期待されています。垂直農場では、作物栽培のためのあらゆる周辺条件をコントロールし、シーズンオフに新鮮な農産物を販売することが可能になれば、農家の収益は上がります。
ある調査によると、オフシーズンにトマトを生産すると、1ドルの投資に対して3.3ドルの収益が得られますが、ハイシーズンでは収益が1.7ドルにとどまることが示されています。つまり、垂直農場に投資することは、経済的にも、社会的にも理にかなっているのです。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
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