韓国艦の観艦式参加を巡っては、なかなか正式決定がされず、周囲をやきもきさせた。酒井良・海上幕僚長は25日の記者会見で、回答期限を約2週間過ぎても韓国から回答が来ていないと説明していた。ところが、9月初めにソウルで面会した韓国政府高官は「参加するに決まっているだろう。行かないという選択肢はあり得ない」と自信たっぷりに語っていた。韓国国防部・海軍も艦艇の派遣を前提に準備を続けていた。「参加は当たり前」という雰囲気で満ちていたのに、なぜこれほど正式回答までに時間がかかったのか。
松野博一官房長官が、観艦式に韓国を招待している事実を明らかにしたのは、今年8月23日の記者会見でのことだった。複数の関係者によれば、6月ごろには日本政府から韓国政府に対し、招待状を正式に送っていたという。すでにこの時点で、韓国では日米韓協力を唱える尹錫悦政権が発足していた。韓国側の関係者の1人は「本当は、招待状が来た時点で、すぐに参加すると回答すべきだったが、間が悪かった」と語る。ちょうど、尹大統領の支持率が落ち始めた時期と重なったからだ。
韓国ギャラップによれば、5月の政権発足当初は50%を越えていた尹大統領の支持率は、知人の政府機関への登用など「公私混同人事」への批判もあって、6月半ばから下落傾向に入った。6月末には支持率43%、不支持率42%と拮抗し、7月初めには支持率37%、不支持率49%と逆転した。当時、尹大統領の側近たちのなかで「このタイミングで、日本の観艦式に参加すると発表すれば、支持率下落に歯止めがかからなくなる」という懸念の声が出ていたという。
最初の発表のタイミングを逃した後も、尹大統領の支持率は低迷を続けた。韓国ギャラップによれば、10月第4週の支持率は30%、不支持率は62%だ。最低値だった24%よりはいくらかましだが、低空飛行であることに変わりはない。別の関係者は「こんなことなら、最初から発表しておけばよかったのに」とも語る。