かっこよく実力アップのシビック・タイプRは世界記録を取り戻せるか?

期待通りの進化を見せたシビック・タイプR


注目のエンジンは基本的に先代のパワートレーンと同様のものを採用しているけど、いろんな部分が向上している。最高出力は先代より10ps増えて330psにアップし、最大トルクも20Nm上がって420Nmを発生する2リッター直4直噴ターボエンジンを採用している。ターボチャージャーの効率向上や吸排気系の流量増大が測り、ECU制御の最適化により、高回転でのレスポンスが鋭くなり、環境性能の向上を同時に実現した。また、エンジンと6速M/Tとの相性が抜群に優れている。ギアをチェンジするたびに、つい微笑みが出て満足感を感じる。あまり深くは触れないけど、ギアシフターとクラッチとの相性も良くて、クラッチのフィーリングは重すぎず、軽すぎずで、運転を楽しくしている。

とにかく、言うまでもなくタイプRは大変良く出来上がったスポーツカーだ。シャシー剛性はロードカーと思えないほどしっかりしている。にも関わらず、その直後に同車で一般道に出ても、道路のウネリやつなぎ目を上手に吸収し、乗り心地も意外にしなやか走行できることに感動した。でも、サーキットの直線での加速、ブレンボー製の4ポットのブレーキの効き目、コーナーの入口と出口の速さは、半端じゃない。

後ろから見たシビック

このようにサーキットで全開で走行してふと思ったけど、開発陣が国内レースのスーパー耐久でコツコツと先代タイプRを走らせてきた成果があったからこそ出来上がった「FF世界最速」(になるだろう!)の走りが実現できたに違いない。動力性能における先代と新型との違いは、加速とコーナリングで特に感じられた。

フロント・サスペンションの変更でコーナーでの踏ん張り感が良くなって、タイヤがより良く働いてくれる。また、リアの剛性の強化で後輪のタイヤが沈み込み、特にコーナーの出口からのグリップ力が良い。そのおかげでステアリングもより自然になり、オーバースピードでアンダーステアを出しながらコーナーを進入しない限り、狙ったラインをそのまま綺麗にトレースする。

今回、ドライバーのサーキットでの走行をより楽しくするために、ホンダは「LogR」という「データロガー」を装着した。このデバイスは何ができるかというと、サーキットでは、もちろんラップタイムを図ると同時に、自分のドライビング・テクニックがどの程度上手いのかを判断してスコアを出してくれる。僕が参加した試乗の枠では、レーシングドライバーの中谷明彦さんが96点を出して当日のベストスコアを記録した。

データロガーの画面

ピーターとシビック

ちなみにログRには、国内自粛規制の180km/hのスピードリミッターのスピード解除機能が付いているので、日本の13ヶ所のJAF公認サーキットに入れば、GPSの測位情報によってリミッターが解除され、サーキットを全開で攻めることができる。ログRのデータをSNSでシェアしながら、世界中のタイプRのユーザーと分かち合うことができる。

またFFの最速のスポーツカー(になるだろう)であっても、ストレスフリーの運転ができるように、アクティブ・クルーズ・コントロール、車線維持支援システム、ブラインド・スポット・モニター、衝突軽減ブレーキ、後退出庫サポートなどの安全機能が搭載されている。

先代が世界累計4万7200台を売り上げるヒット商品となったことで、新型への期待が大きい。今回、サーキットで試乗できる最後のガソリン仕様のタイプRになるだろうと思って、半分寂しい気持ち。残りの半分は、これから出てくるタイプR電動仕様はどんなクルマになるのかが楽しみだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター ライオン

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