炭素捕捉設備が5割近く増 それでも気候変動対策には不十分

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世界中で計画されている炭素捕捉・保存施設の数は2022年に44パーセント増加した。これは業界としては大きな成長に当たるものの、今世紀の半ばまでに二酸化炭素の実質排出量ゼロを達成する上で必要なCCS(二酸化炭素の回収・貯留)施設のごく一部でしかない。

国際シンクタンクのグローバルCSSインスティテュート(Global CCS Institute)は先日、「Global Status of CCS 2022(CCSの世界的地位 2022年)」の報告書を発表した。同社のジャラド・ダニエル最高経営責任者(CEO)は「CCSの導入が増えていることには励まされるが、実質排出量ゼロを達成し、達成を支援する上で必要とされる規模にはまだ達していない」と述べている。

ダニエルは「気候に関する目標を達成するには、今から2050年までの間に設置されているCCSの容量を少なくとも100倍にする必要がある」と指摘している。

同報告書によると、現在進行中のCCSプロジェクトは196件だ。内訳としては、稼働中が30件、建設中が11件、開発中が153件、停止中が2件だった。2022年の増加分の大半は米国内にあり、34件のプロジェクトが新たに進行中だ。2位はカナダで19件だった。

こうしたプロジェクトが捕捉できる炭素の量は、年間約2億4200万トンに及ぶ。グローバルCCSインスティテュートは、今世紀半ばまでに捕捉量を4億2500万~6億5000万トンにする必要があるとしているが、国際エネルギー機関(IEA)は2030年までに16億トンに増やす必要があると主張している。

CCSが米国で最も大きな成功を収めた理由は、米エネルギー省の促進活動にある。

同省の化石エネルギー・炭素管理局で主席副次官補を務めるジェニファー・ウィルコックスは「脱炭素化が非常に難しいセクターがある」ことを指摘した。

ウィルコックスは、CEOが主導する取り組み「オイル・アンド・ガス・クライメット・イニシアチブ(Oil and Gas Climate Initiative)」主催のウェビナーで、「脱炭素化が本当に難しい分野の埋め合わせのため、大気中の二酸化炭素の蓄積プールから二酸化炭素を除去する必要がある」と述べ、「炭素の除去については、現在炭素捕捉により避けられる排出量を相殺する道具として考えるべきではない」と主張した。
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翻訳・編集=出田静

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