キャリア・教育

2022.11.04 09:00

個の時代にこそ必要な「信じるリーダーシップ」

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毎週月曜日、午後1時、私は赤坂にあるオフィスの“ポーランド”という部屋の扉をノックする。上司が待っていて、近況の報告やディスカッションをする1on1の場である。普段は在宅勤務が多い私も、1on1はなるべく対面でやりたいと思い、会社に行っている。

ちなみに、1on1はもともと水曜日だったが、水曜日の習い事がなくなり、早く帰ってくる娘のために月曜日に変更してもらった。

このミーティングに向かう僕の心はとても穏やかである。トピックによって、多少の緊張感がある時もあるが、行くのが嫌だと思ったことはない。

社会人を長くやっていると、それなりに緊張するミーティングもあれば、もっと言うと出たくないミーティングも沢山あった。用意したプレゼンうまくいくか不安になることもある。考えに考えた提案が全否定されたらどうしようと、いらぬ妄想が膨らむこともある。

ミーティングに向かう気持ち。実はその違いこそ、この時代に求められるリーダーシップの大きなヒントである。

私が穏やかな心でミーティングに向かうことができるのは、相手との関係において「信じてもらっている」という実感が根底にあるからに他ならない。この「信じる」という至極当たり前のことは、実はすごく難しい。

多くのリーダーは、意識していてもいなくても、「性悪説」と「性善説」をそれぞれのバランスを持っている。何もリーダーだけの話ではなく、親や学校の先生、スポーツのコーチなども同じである。そして自分はどんなバランスの中で人生を送ってきたかが、自分のリーダーシップに大きな影響を与える。

私の場合、比較的、性悪説によく触れる人生を送ってきた。幸い否定されまくる人生ではなかったが、自分の考えを躊躇なく発言できるほどの心理的安全性はなかった。そんなキャリアの中でも、何人かの完全性善説、もしくはきわめて性善説性の高い会社やリーダーに出会うことができた。その時に、彼ら彼女らが私を「完全に信じてくれている」姿勢を見て多くの気づきを得た。

その根底に「信頼」があるか?


リーダーとして「信じること」には3つの壁がある。

1つは、自分の価値観や考え方を軸に考えてしまうこと。自分とは真逆の意見であっても、相手の考えに耳を傾け、それを認めることは極めて難しい。特に自分の大きな成功体験に基づいた考え方があると、それに反するものは信じられない気持ちが残るものである。

2つ目は、相手自身が自分を信じきれていない場合である。私もあるが、どこかで自分の考えや提案を信じきれていないところがある。その状態で、他者を信じきるのは極めて難しい。

3つ目は、問題やトラブルが起きているなどの外的要因。うまっくいっていない状況でも相手を信じきるというのは簡単ではない。どうしてもどこか疑いの目で見てしまい、自分の価値観で問題を解決しようと思うのは人間のサガだろう。
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文=西野雄介

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