「EVのバッテリーは、携帯電話と同じで残量が20%を切らないようにすることが大切だ。それを怠るとバッテリーの寿命が短くなる」と話すのは、ロサンゼルスのダウンタウンと郊外を結ぶ電動バスのメインテナンス手がけるフットヒル・トランジット(Foothill Transit)のロナルド・コルデロだ。同社は、交通オペレーションのパイオニアとして過去12年間、この分野のイノベーションの最前線に立ってきた。
バイデン政権は、商用車や交通機関のEV化を推進し、莫大な資金を充電所の整備や車両の製造に投じている。しかし、「EVの導入には、従来のディーゼル車とは異なる配慮が求められる」と、パリに本拠を置く公共交通のオペレーターであるケオリス(Keolis)の北米担当のデビッド・スコレー(David Scorey)は話す。
車両の運行会社は、EVのメンテナンス方法を学び、車両の充電時間を考慮し、電力コストを意識する必要がある。
今後10年間で、ますます多くの企業がこうした課題に直面する。アマゾンは、今後数年間で10万台のリビアン製のEVバンを投入し、2023年にはステランティス製のバッテリー駆動車のラム(Ram)の利用も開始する。フェデックスも数千台の電動配送車を走行させており、GMの電動トラック部門のブライトドロップ(BrightDrop)の配送車数百台に加え、さらに多くの車両を追加する予定だ。さらに、UPSも1000台以上のバッテリー駆動のトラックを保有し、英国の新興企業アライバル(Arrival)からの1万台の納車を待っている。
これらの車両が直面する大きな問題の一つは、送電網の信頼性だ。米国最大のEV市場であるカリフォルニア州では、9月初旬の猛暑でエネルギー使用量が急増し、送電網の逼迫が懸念された。今度の気候変動によって、さらなる高温や激しいハリケーンも予想される。
フェデックスの米国内車両メンテナンス担当マネージャーであるビル・カウェインは、「今後増加する電気自動車をサポートするためには、送電網の容量を増やす必要がある」と述べている。