もっと前向きに人生を楽しむ 私の「生き方」を変えた一冊

CEOがすすめる一冊「LIFE SHIFT─100年時代の人生戦略─」

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、groovesの池見幸浩が「LIFE SHIFT─100年時代の人生戦略─」を紹介する。


日本人の平均寿命(2020年)は、男性が81.6歳、女性は87.7歳と、ここ9年間で過去最高を更新し続けています。現実味をおびてきた「人生100年時代」をどう生きるのか──。「LIFESHIFT」は、多くの人が抱えている漠然とした不安にヒントを与えてくれる一冊であり、長寿国の日本で大ベストセラーになったのもうなずけます。

私も、著者のリンダ・グラットン氏が2012年に発刊した『WORK SHIFT』に感銘を受け、本書も発売と同時に読み始めました。そして、長く生き、長く働くためには、暮らし方や働き方を変えて、もっと前向きに人生を楽しむことが大切であり、このトレンドは今後、世界でますます強くなると感じたのです。

そこで私は、自分自身と家族がリフレッシュできる環境づくりから始めました。東京から海の見える湘南に引っ越し、朝は娘と海を散歩したり、休日はサーフィンや釣りを楽しみました。同時に、会社全体の働き方も17年ごろからリモート前提の働き方に変え、ビジネスモデルも大きく転換させたのです。

当社はHRTechサービスを展開しており、当時は東京の人材を東京の企業に紹介するという一極集中型のビジネスモデルでした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大前のGDPを見ると、東京都の稼ぐ割合はたった17%。GDPの大半を稼ぎ出している地方には、歴史ある優良企業が多くあり、グローバルに事業を展開している企業が多数存在しています。

優秀な人材は東京に集まりがちですが、現実的に住みにくい街です。優秀な人材が地方の優良企業で最先端のキャリアを築いていくという働き方があってもいいのではないか。そこに、当社の価値があるのではないかと考えるようになりました。

当社は現在、全国18の地域の金融機関と提携し、北海道から沖縄までオンラインで多くの優良企業と優秀な人材を繋いでいます。テクノロジーを活用し人材の適正な配分を実現すれば、日本のGDPをもっと上げることができます。私がつくりたいのは、そういう世界です。

そしていま、私は日本をより豊かにするため、海外の優秀な人たちとともに働く社会を作ろうとマレーシアで新たな事業を展開しています。日本は世界最大の長寿国であり、世界で今後起こりうる課題を抱えた縮図のような国です。だからこそ、先陣を切ってさまざまなチャレンジをすれば、よりよい豊かな国になれるはずです。

私は本書から自分の生き方を学びました。働き方も幸せも人それぞれです。皆さんも自分らしい人生を見つけるために「LIFE SHIFT」をぜひ実践してみてください。

title/LIFE SHIFT ─100年時代の人生戦略─
author/リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット(訳 池村千秋)
data/東洋経済新報社 1980円/428ページ


いけみ・ゆきひろ◎1977年生まれ。関西外国語大学卒業後、大手通信会社、資産管理会社を経て、2004年にgroovesを設立。人財紹介net(現クラウドエージェント)などを運営。20年には同サービスが経産省が後援する第5回HRテクノロジー大賞「地方活性賞」を受賞している。

リンダ・グラットン◎ロンドン・ビジネススクール教授。人材、組織論の世界的権威。世界で権威のある経営思想家ランキング「Thinkers50」で毎年ランクイン。

アンドリュー・スコット◎ロンドン・ビジネススクール経済学教授。欧州CEPRフェロー。ビジネスサイクル、金融・財政政策が専門。英国予算責任局の諮問委員。

文=内田まさみ 写真=タワラ

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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