もちろん、非ナチュールなワインを飲むより、環境への負荷は少ないに違いないが、せっかく“自然”につくられたワインをプラスティックで豪華に幾重にも包装しては元も子もないだろう。
「環境や気候変動を真剣に考えるなら、栽培する畑や農法のことばかりでなく、ボトルやパッケージ、そして運送方法に至るまで、もっと多角的に取り組まないと」と語るのはフランスのシャンパーニュ・メゾン「テルモン」CEOのルドヴィック・ドゥ・プレシ氏だ。
1912年に創業した「テルモン」は2017年に初めて畑でオーガニック認証を取得。自社と契約農家のブドウ畑が100%オーガニック認証されることを31年までに実現すると目標を掲げている。「テルモン」の、他社の追随を許さないサステナブルなシャンパーニュづくりとはいったいどんなものなのだろうか。来日したプレシCEOに話を聞いた。
サステナビリティに真剣に取り組む「テルモン」
「テルモン」CEOのルドヴィック・ドゥ・プレシ氏。
「まずはやはりブドウを育てる土壌が大切です。現在、シャンパーニュ地方では有機農法でブドウを栽培している畑はたった4%しかありません。なぜそれほど少ないか? それはやはり、シャンパーニュ地方の気象条件が厳しいから。降雨量が多く、湿気が高いシャンパーニュでは、ベト病(ブドウ病の一種)の発生率が高くなります。
一方で、『テルモン』は現在、自社および契約栽培農家の畑合計約80ヘクタールのうち、55%でオーガニック認証を取得しています。これを、まずは自社畑について2025年までに100%にすることが目標。さらに、2031年には契約栽培農家も含めて100%オーガニックをめざします」
「テルモン」は仏シャンパーニュ地方エペルネ近郊のダムリー村に居を構える。
「次に、シャンパーニュのボトル。現在シャンパーニュ地方では1年に約3億2000万本のボトルが製造されています。そのほとんどがこのグリーンのガラス製で、なで肩のすっきりとしたフォルム。見たことがおありでしょう? これを仮に、オリジナリティを出そうとして他のデザインに変えてしまうと、それだけで排出される二酸化炭素量は大きく変わるんです。だから『テルモン』ではもっとも一般的なこの形を採用しました。
このグリーンガラスなら86%まで再生ガラスを使用できるんです。2021年ヴィンテージからは、美しい薔薇色のロゼシャンパーニュもこのボトルを採用しました。普通なら透明なガラスのボトルに入れたいところですが。私たちはそれをしません。透明のボトルは再生ガラスを使えないからです。私たちの本気度が伝わるでしょう?
さらに、ボトルの重さにも注目しています。現在の一般的なボトルは1本あたり835gほどですが、私たちはこれを800gまで軽量化するつもりです。そのことで、運送に関わるカーボンフットプリントは大きく減少させることができるでしょう」