プーチンとの戦争後、自信に満ち強気になるウクライナとの付き合い方

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政治家はさまざまな理由で戦争に関わることを躊躇する。その主な理由の1つは、戦争は一度始まると、それ自体が生命を持つことがあり、また往々にしてそうなるからだ。実際、戦争は紛争を起こした側が達成しようとした結果とは正反対の結果を生むことがある。

ウクライナで起こっていることほどそれが顕著な例はない。ロシアのプーチン大統領が当初から事態を見誤っていた可能性がますます高まっているようだ。実際のところ、プーチンがウクライナに侵攻して成し遂げようとしたことが達成されるどころか、プーチンが防ごうとしたものがほとんどすべて生み出されてしまう可能性が高まっている。

プーチンは2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻に至るまで、ロシアとウクライナは1つの民族であり、ウクライナ国民は重武装した招かれざるロシア軍が自国に侵攻して国民を殺害しても、両手を広げて仲間として歓迎するだろうと主張した。ウクライナの独立性という概念は誤ったものだと退けた。

プーチンの主張は歴史的に不正確で、2月の時点では単なる誤りだったばかりか(実際には現在、ロシア、ウクライナ、クリミア、ベラルーシ、ポーランド、モルドバ、リトアニア、ラトビア、その他として知られているこの地域の複雑な歴史は約1000年前にさかのぼり、数世紀にわたる国境の移動、同盟の変化、戦争、条約、征服と追放がともなう)、戦争が行われている現在、ウクライナの独立アイデンティティは確かに存在している。プーチンにとって、その責任は自分自身にある。なぜなら、ウクライナの人々を現在のように団結させたのは主にプーチンの戦争だからだ。

ロシアが第二次世界大戦で「大祖国戦争」と称して兵士の士気を高めたように、ウクライナもいま「祖国戦争」を戦っている。この比較的小さな国は、自国よりはるかに大きく、軍事的にも強力な隣国ロシアと戦うために団結した。確かに、ウクライナ人は多くの国から物資援助を受けているが、彼らはほぼ完全に自分たちの手、自国の兵士で、内輪もめを捨てて1つの統一されたウクライナ軍を形成して戦っている。

戦争はまだ続くだろう。また、大量破壊兵器を使用して事態がさらに悪化する恐れもある。しかし、プーチンが常に望んできたような、ロシアに併合されないまでも軍事力を失ったウクライナを手に入れる可能性はますます低くなっているようだ。戦争が続くほど、意図したものとは逆の結果になる可能性が高くなり、西側諸国はそれを見越した計画を立てる必要がある。
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翻訳=溝口慈子

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