経済・社会

2022.10.28 10:00

温室効果ガス排出量は今も増加中、2030年までに10.6%増に

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26日に発表された国連の報告書によると、現在の状況では今世紀末までに地球の気温は2.9度上昇し、不十分な気候変動対策が続けば気候変動の影響は壊滅的なレベルまで加速すると科学者は警告している。

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の報告書では、2030年までに温室効果ガスの排出量が2010年比で10.6%増加すると予測している。

この増加は、国連気候変動に関する政府間パネルが今世紀末までに世界の気温上昇を1.5度に抑えるというパリ協定目標を達成するために必要と判断した、2030年までの排出量43%削減(2019年比)を大きく上回っている。

近年、いくつかの国が排出量の大幅な削減を約束したとはいえ、1.5度の目標を達成するにはさらなる削減が必要だ。さもなければ気候変動の「連鎖的かつ不可逆的」影響により干ばつ、飢餓、暑さ、海面上昇、山火事など深刻な影響が出る可能性があると国連当局は以前から警告している。

10.6%という増加率は、これまで国連が予測していた15.9%より低い。報告書は一連の炭素排出削減計画や森林再生、食品廃棄物の削減、再生可能エネルギーの生産、二酸化炭素の回収・貯蔵といった気候変動関連の適応策を踏まえている。

報告書ではまた、2030年以降も排出量が増加し続ける可能性は低いことが指摘されている。26日に記者会見した広報担当のサイモン・スティールによると、これは良い兆候だが、科学者が「壊滅的」な温暖化を避けるために必要という「急速な減少傾向」ではない。

調査は今年、欧州の一部や米西海岸、ロッキー山脈での壊滅的な山火事、うだるような夏の熱波、世界的な干ばつ、加速する海面上昇などがみられた中で行われたもので、これらはすべて気候変動によって加速した気温上昇によって悪化したと科学者は指摘している。

米国では今夏成立した「インフレ抑制法」により、米国の温室効果ガス排出量が2030年までに40%削減されるとホワイトハウス当局は推定している(2005年比)。しかし科学者たちは、地球の気温を産業革命以前の水準より1.5度上昇させないというパリ協定の画期的な目標を達成するのに各国の行動が十わかは疑問視している。

米共和党議員は、グリーンエネルギー生産対策を通じて気候変動に対処するための3600億ドル(約52兆6000億円)を含む「インフレ抑制法」を非難し、人々がガソリン価格の上昇に苦しんでいる時に、米国のエネルギー生産者に打撃を与えることになると主張している。ウェストバージニア州選出の上院議員ジョー・マンチンを含む穏健派の民主党議員の支持を得るために、民主党議員はこの画期的な法案に化石燃料への投資と新しいパイプラインへの補助金に関する条項を挿入した。こうした動きは、化石燃料生産者がさらに長く操業できるようになるという環境保護主義者からの反発にもつながっている。

科学雑誌「Nature Communications」に8月に発表された研究では、化石燃料の大手企業も排出量削減に十分取り組んでおらず、そうした企業の計画はパリ協定が掲げる目標と「相容れない」ことが明らかにされた。研究で分析されたBritish Petroleum(ブリティッシュ・ペトロリアム)、Equinor(エクイノール)、Shell(シェル)の3社はいずれもネットゼロ排出の目標を掲げており、EquinorとShellは2050年までに達成する計画で、BPは2050年までに達成することを目指している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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