プラスチックの代わりは、本当に「紙」で良いのか?

海洋プラスチック問題が深刻化し、世界中でプラスチックの規制が進む中、代替品として紙製品の需要が高まっている。

事例を挙げると、ネスレがキットカットの外装を紙にしたり、マクドナルドが紙ストローを導入したり、スターバックスが一部のドリンクを紙カップに切り替えたりしている。

プラスチック汚染対策の視点で見ると歓迎すべき流れだが、紙製品に問題はないのだろうか。今回は紙製品のメリットとデメリットをまとめていく。

自然に還る




ご存じの方も多いと思うが、紙の原料であるセルロースは天然由来の物質なので、自然界で分解される。

プラスチックは毎年約800万トンが海に流れ出ており、海洋で分解されるまでに数百年かかるため、紙製品への切り替えは効果的な対策だと言える。

生分解性プラスチックの製品も増えているが、海洋分解性があるものはほとんどないのが現状だ。

カーボンニュートラル




日本ではプラスチックの58%が燃やされてエネルギーとして回収されているが、原料が化石燃料であるため、燃焼時にCO2が増加してしまう問題がある。

しかし、紙は木からできているため、カーボンニュートラルの考え方から、燃やしてもCO2の増加にはつながらない。

現状は100%バイオマスプラスチックの製品が普及していないので、紙に代えるほうが地球温暖化の対策になるといえる。

「紙の使用=森林破壊」ではない




「紙の使用が森林破壊につながる」というイメージを持つ人は多いと思うが、これは半分正解で半分間違いだ。

紙の需要が森林の持続可能な供給を超えると、森林破壊や地域住民との紛争につながってしまうが、逆に紙の需要が低くなると、森林の価値が下がって伐採されてしまう。

紙の需要を安定させて森林がお金を生む状態を維持することで、天然林が農地やリゾートなどに転用されるのを防げるのだ。

生産にかかる環境負荷は大きい


紙製品はさまざまな問題を解決する反面、生産に多くの資源を必要とするという環境に悪い側面もある。

紙袋はレジ袋よりも生産に必要なエネルギーが10%多く、消費する水の量は4倍にもなる。また、重くてかさばるため、輸送の際に出るCO2が増加してしまう。

消費する資源が多い分コストがかさみ、プラスチック製品より高価になるため、貧困の増加につながる可能性もあるのだ。
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文=エシカルな暮らし編集部

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