カムヒは投稿のなかで、自分は「ユダヤ人コミュニティーの一員」だと明かしつつ、「アディダスのグローバル・ウィーク・オブ・インクルージョン(グローバル包摂週間)が終わったが、わたしは包摂されているようにはとても感じられない」と訴えた。「雇用してくれている会社のために沈黙を続けることはもうできない」、「何を言わないということがすべてを語っている」とつづり、カニエの反ユダヤ主義な言動から2週間たつのに会社は何の行動も起こしていないと嘆いた。
名誉毀損防止同盟(ADL)は14日に、イェが今月パリで開催されたファッションショーに「White Lives Matter(白人の命は大切」)と書かれたシャツを着て登場したことなどを報告していた。ADLは19日にこの記事を更新し、イェがその後、マルチプラットフォームメディア「リボルトTV」の番組で「ユダヤ人メディア」や「ユダヤ人シオニスト」を繰り返し非難したことなどを引き、「イェは引き続き陰謀論や反ユダヤ主義的な言葉を増幅させている」と指摘している。
カムヒは「わたしたちはブランドとして、もっとちゃんとしないといけない。従業員のために、コミュニティーのために、もっとちゃんとしないといけないんです」と記し、アディダスが態度を明確にするまで、会社と距離を置く考えも示していた。
カヒムの投稿にはおよそ2万5000件にのぼるコメントや「いいね!」が寄せられ、大多数の人は反ユダヤ主義に対する彼女の闘いを支持していた。カヒムがすぐに会社を辞めなかったことを疑問視する人は少数派で、組織にとどまって闘い、変化を起こそうとした彼女の決断を支持する声が圧倒的だった。
彼女の行動は功を奏したようだ。広く読まれたこの投稿の翌日、アディダスはイェとの関係を解消した。「アディダスは反ユダヤ主義も、その他いかなる種類のヘイトスピーチも容認しない。Yeの最近の言動は憎しみに満ちた危険なもので、受け入れがたい。それは多様性と包括性、相互尊重と公平性という当社の価値観に反している」と述べている。
企業の経営陣は、自社のために働いて収入をもたらしてくれる存在である従業員をどう管理すべきなのか。従業員たちは、自分の会社が悪い方向に向かっていると感じたとき、どうやって声を上げればいいのか。今回の問題はそんな問いを投げかけることになった。
フォーブスによると、イェの純資産のうち15億ドル(約2200億円)はアディダスとの契約によるものが占めていた。それを失うことで、彼の資産額は4億ドル(約590億円)に縮んだ。ほかのファッションブランドや企業はイェの言動に迅速な対応をとり、バレンシアガとヴォーグはイェとは今後コラボレーションしないと表明した。ハリウッドのタレント事務所CAAも、イェとの代理人契約を終わらせている。
アディダスの関係解消を受けて、ギャップは、アディダスとイェが共同開発した「Yeezy」ブランドの商品を店舗やウェブサイトから撤去すると発表している。
(forbes.com 原文)