香港では、新型コロナウイルス関連の規制や政治的な締め付けによって頭脳流出が深刻化している。この問題に対処するため、リーは年収250万香港ドル(約4800万円)以上の人物や、世界トップ100の大学を卒業後に少なくとも3年の実務経験を持つ人を対象に2年間の新たなビザを支給すると発表した。
リーはまた、人材優遇プログラムの資格を持つ人が香港で住宅を購入し、後に永住権を取得した場合に、不動産購入時に支払った印紙税を還付すると発表した。
リーは、他にも人工知能(AI)やフィンテック、新エネルギーなど戦略的に重要な産業で事業を行う中国本土や海外の企業を誘致するため、特別オフィスの開設や、優秀な人材を採用する専門チームの設置などの施策を発表した。彼はまた、香港で事業を行う企業を誘致するため、300億香港ドルの投資ファンドを設立する方針も示した。
「パンデミックは大きな影響を及ぼしたが、新たなチャンスも多く生まれた。一連の独自策によって、優秀な人材を呼び込むことができると確信している」と、リーは記者会見で語った。
しかし、リーは3時間近い演説の中で、コロナ規制を完全に撤廃する時期について明言しなかった。香港では、海外からの入国者に対するホテルでの隔離措置を9月下旬に撤廃したばかりだが、入国後3日間はレストランなど高リスクな場所への訪問を禁止するなどの規制は維持している。
香港政府が中国のゼロコロナ政策に追従したことで、多くの企業や経営者はシンガポールのように規制を完全撤廃した国に移転した。政府データによると、香港の労働人口は3月から5月にかけて約375万人と10年ぶりの低水準にまで激減し、その後少し回復した。一方、2021年の政府データによると、香港では海外労働者による新規ビザ申請件数が、過去4年間で3分の2も減少した。
コロナ規制の撤廃が鍵に
在香港欧州商工会議所のInaki Amateは、新たな措置を歓迎しつつも、それだけでは不十分だと指摘した。「海外の優秀な人材から見て競争力を増すためには、コロナ規制を全て撤廃することが重要だ。今の香港は、入国することも、住むことも困難な場所だと思われている」とAmateは述べた。
英国商工会議所のエグゼクティブディレクターであるDavid Grahamも同じ考えだ。「香港の人材誘致戦略は、海外人材が香港に来ることを促進するものだ。しかし、これらのイニシアチブは、国境が完全に開放され、コロナ規制がさらに緩和されることによってはじめて成功するものだ」とGrahamは述べている。