楽園ハワイのお受験事情 父親が日本へ「逆出稼ぎ」も

家族で海を眺める。でも父親はきっとため息をついているに違いない。(C)HTA/ Tor Johnson

前回のコラムでは、ハワイの2つの名門プライベートスクール「プナホウ」と「イオラニ」をめぐるお受験戦争を紹介した。実は、この両校、受験は一発勝負ではない。そのチャンスは複数回ある。

最初の幼稚園入学時だけでなく、小学校入学後も入試のチャンスはある。ただ、ちょっと複雑だ。幼稚園入試の次のチャンスは、プナホウが4年生、イオラニが6年生への進学時。ただ、プナホウだけは幼稚園入試でウェイティングリスト(ようするに補欠)に入った子どもだけ、小学校進学時に再挑戦できる。その後も3年生までは補欠になれば翌年再挑戦できる。日本の中学進学にあたる6年生進学時には両校とも入試があり、その後はイオラニが7年〜9年生まで毎年、プナホウは7年生と9年生で入試がある。プナホウの8年生と、両校の10年生以降は欠員分のみの補充試験となる(12年生を終えると卒業)。

この入試制度を理解するだけでも、6・3・3制度に慣れた日本人は頭がクラクラするかもしれない。

入学試験では、それぞれ学力だけでなく作文や面接などさまざまな要素で合否が決められる。スポーツや社会貢献活動への参加も大きな要素だ。要するに「本校の校風に合っているか」どうかをさまざまな角度から診断する。

筆者の感じでは、なんとなく入学受験というよりは就職試験に近い気がする。また、親の職業や出身校、その学校との関わりなどもれっきとした判断材料となる。日本では「コネ」と言われるが、アメリカではコネも本人の実力のうちなのである。

お受験のために英語学校に進学塾


さて、ここで「お受験」となる。ハワイでも名門校の幼稚園に入学させるために熾烈なお受験が存在する。典型的なパターンを紹介しよう。まず、名門幼稚園に入学する子どもが多い「お受験用プリスクール(保育園)」なるものが存在する。

要するに名門校のプナホウやイオラニなどのプライベートスクールに、多くの卒業生を送り込むプリスクールということになるのだが、それにも「御三家」があって、セントラルユニオン、セントクレメンツ、ワイオケオラという3つがそれにあたる。通常2歳くらいからプリスクールに入るのだが、「名門校を受験しよう」と思い立つと、まずはこんな幼い頃から御三家への入学することをめざすことになる。

それと並行して、英語が弱い日本人夫婦などの場合は、英語力を鍛えるため「七田式」出身の船津徹先生が主宰する「TLC for Kids」に通う子どもが多い。歌や映像を組み合わせたオリジナルのフォニックスプログラムに定評があり、卒業生からは名門大学進学者も多数輩出している。

ここに通いつつ、さらに「塾」にも通う。ハワイで名門校受験のための塾というと有名なのは1つしかない。「高橋塾」である。東京教育大学(現筑波大学)出身の高橋俊明先生が1977年にホノルルに開塾。古くは、ハワイ育ちのタレント早見優さんも通っていたというから、かなりの歴史もある。

高橋塾は、現在に至るまで名門校プナホウとイオラニに高い合格率(塾の発表では60%以上)を維持し、地元の教育ママやパパたちの支持率もずっと高止まりのままである。高橋先生の、子どもの性格まで見越した熱心な受験指導はさすがのひと言で、経験と実績、そして情熱で、多くの子どもたちを2つの名門校へと送り込んでいった。


プナホウスクール(撮影:岩瀬英介)


イオラニスクール(撮影:岩瀬英介)
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文・写真=岩瀬英介

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