米住宅価格に急ブレーキ、2000年代のバブル崩壊に類似との指摘

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米国の住宅価格は8月も過去最速のペースで下落し、一部の専門家は住宅市場の急転換が最終的に景気後退につながることを懸念している。

10月25日に開示されたS&Pコアロジック・ケース・シラーの全米住宅価格指数データによると、8月の住宅価格は前年同期比で13%の上昇で、伸び率は7月の15.6%から大きく鈍化した。

ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの大都市の価格を測定するケースシラー20都市指数は前月比1.6%減となり、すべての主要都市で価格が下落したことを示している。最も下落したのは西部で、サンフランシスコ、シアトル、サンディエゴでの価格は7月からそれぞれ4.3%、3.9%、2.8%の下落となっている。

S&Pのマネージング・ディレクターのクレイグ・ラザラは、「この下落は住宅価格の上昇がこの春にピークに達していたことを明確に示しており、連邦準備制度理事会(FRB)が金利の引き上げを続け、住宅ローン負担が増す中で、住宅市場の大幅な減速は今後も続く見通しだ」と述べている。

「住宅ローン金利は、パンデミック時の3%未満から20年ぶりの高水準となる7%近くまで上昇し、ここ数十年で最悪の水準に近づき、住宅市場に破壊的な打撃を与えた」と、インベステック・リサーチのジェームス・スタックは指摘した。

スタックは、「住宅市場が最終的にどのように収束するかは、今後起こりうる不況の深さと期間が決定要因になる」とし、平均的住宅オーナーの住宅ローン支払い額が、収入の30%以上を占めていることを指摘した。この数値は、2005年の住宅バブル期よりも悪く、1980年代初頭の記録的高金利時代に次ぐものという。

「この状況は、2005年の住宅バブル期の警告と非常によく似ており、米国の住宅市場がハードランディングに向かっていないことを主張するのは難しい」とスタックは述べている。2005年の住宅バブル崩壊後、住宅価格の中央値は最終的に30%以上暴落し、回復までに10年近くがかかっていた。

今年の住宅販売価格の中央値は、第2四半期に過去最高の40万6000ドルまで上昇したが、来年初頭には8%下落して37万5800ドルになると予測されている。一部の専門家は、主要な市場では20%もの下落になる可能性があると述べている。

一方、住宅ローン支払いが収入に占める割合は上昇しているが、借り手の質は2005年の住宅バブル期とは「大きく異なる」と、資産管理会社グレンメデのアナリストは指摘した。当時、760点以上のクレジットスコアを持つ借り手は、25%に過ぎなかったが今は約70%という。

住宅市場の調整はインフレの抑制につながるが、急激な減速は最終的に景気後退につながるのではないかと専門家は懸念している。コメリカ・バンクは、住宅市場の崩壊が今年のGDP成長率を約0.5%押し下げると予測している。また、引っ越しをするアメリカ人が減少しているため、住宅関連産業も減速し、経済にとってもうひとつの逆風になるとコメリカは指摘した。

米経済分析局は10月27日に第3四半期のGDP成長率の第一次推定値の発表を予定している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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