アカデミー賞有力候補 愛と友情の物語「アムステルダム」

「アムステルダム」(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved

アメリカの映画界では、例年この時期になるとアカデミー賞を射程に入れた作品が続々と登場してくる。デヴィッド・O・ラッセル監督の「アムステルダム」も、そのような「有力候補」に数えられる作品の1つだ。

来年の3月12日(現地時間)に決定する第95回アカデミー賞の選考対象となるのは、今年12月31日までに公開された作品。公開の時期が早いと印象が薄くなり、ノミネートに不利だと言われている。そこで「後出し」となる10月前後に公開して、キャンペーンを張りインパクトを与えるという戦略がとられたりする。

いまのところアカデミー賞の最有力候補の1つと言われているのは、歴史的大ヒットを記録した「トップガン マーヴェリック」だが、この作品は5月27日に公開されている。これからアカデミー賞狙いの作品が登場してくるとなると、賞レースではやや不利ではないかとも言われている。

「アムステルダム」のアメリカでの公開は10月7日、すでに一部ではアカデミー賞のノミネート(発表は現地時間1月24日)は固いとも囁かれている。それというのも、過去にラッセル監督の作品は、華麗なるアカデミー賞の「ノミネート遍歴」を誇っているからだ。

3作品で25部門ノミネート


デヴィッド・O・ラッセル監督は、1958年のニューヨーク生まれ。米アマースト大学で政治学などを学び、その後、映画監督に転じて湾岸戦争をテーマにした社会派作品「スリー・キングス」(1999年)で頭角を表す。2010年に公開された「ザ・ファイター」はアカデミー賞で作品賞、監督賞を含む7部門でノミネート、助演男優賞と助演女優賞に輝いた。

さらに監督作品である「世界にひとつのプレイブック」(2012年)と「アメリカン・ハッスル」(2013年)も、それぞれ8部門(主演女優賞受賞)、10部門でノミネートされ、一躍、アカデミー賞の常連監督の仲間入りを果たす。

4年間、3作品で計25部門でのノミネートを果たしたが、受賞はわずかに3部門だけ。最大の栄誉である作品賞と監督賞でも毎回候補に挙がったものの、栄冠に至ることはなかった。そのような経緯もあり、前作「ジョイ」(2015年)からは7年ぶりとなる「アムステルダム」では、並々ならぬ意欲を持って取り組んでいるようだ。


(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved
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文=稲垣伸寿

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