──規模よりも質を重視されているのが印象的です。
特にリアル店舗・流通ビジネスにおいては、規模を追いかけたプレーヤーはことごとく苦境に立たされているように思います。例えば百貨店市場は昔10兆円規模あったものが、今では5兆円以下。統廃合を繰り返し、売り上げは縮小の一途です。スーパー業界も一部で同様のことが起こっているように感じます。
コンビニ業界でもいまだに「店舗数」が業界シェアの指標としてよく用いられます。重要ですが、店舗数だけがあたかもこの業界の重要指標というのは意味をなさないと思っています。
そう考える背景には、昨今の時代変化の速さがあります。店舗出店に大きな投資をすれば図体は大きくなる。出店も重要施策のひとつですが、色々な環境変化が起こっている今日の流通市場で、この施策だけでは時代の変化にはついていけません。
10年ほど前のコンビニ全盛期の右肩上がり時代は、規模を追うことが最重要施策でした。いま重要なのは変化にいかに正しく適応し続けるかにあると私は考えました。
例えば百貨店のような巨大店舗であれば建設で何百億円もの投資が必要ですし、地上げだけでも数年かかったりします。ビルができた頃には時代が変わってしまいます。
そういった意味では丸井グループの青井浩社長は素晴らしい経営者だと私は尊敬しています。小売業の変化を誰よりも早く察知して、不動産やファイナンス業にビジネスの軸足をいち早くシフトしていきました。その経営を株式市場は極めて高く評価しているように思います。
リアル店舗・流通業界は特に規模よりもお客様にとっての質が問われる時代。既存の商品開発や店舗数のシェア争いも重要ですが、違った観点で自社を見直すことも必要です。例えばEC、バーチャルとの融合、広告、金融ビジネスなどの実行という異なった分野に積極的に投資し、違った質の戦いをしていかなければならない時代になっているのだと強く思います。