ビジネス

2022.10.26 16:00

ロッテの投資会社代表が語る、スタートアップと大企業の連携に必要なこと #3

露原直人

2022年4月から新たにWell-being分野などを対象に、国内外のシードからミドルステージのスタートアップへ投資活動・事業支援を行うロッテベンチャーズ・ジャパン(ロッテホールディングスの100%出資CVC)。ファーストリテイリング副社長、リヴァンプ創業、ファミリーマート社長など華々しい起業・事業経営実績を持つ澤田貴司(さわだたかし)氏が代表に就任し、話題を集めている。今回は澤田氏が考える起業家の素養、事業経営のポイントなどについてDIMENSIONビジネスプロデューサーの伊藤紀行が聞いた。(全4話中3話)

第一話:ファミマ社長、ファストリ副社長を歴任 澤田貴司が語る、名経営者の共通点 #1
第二話:ユニクロ「フリース」大ヒットに学ぶ、マーケティングの本質 #2

質、変化適応が求められる時代


──スタートアップが規模化していくと、いずれ既存の業界トップと戦う必要があります。ファミマとセブンといったトップの争いで意識されていたことは?

たしかに経営目線でいうとファミマはセブンなどと業界シェア争いをしているわけですが、それは局地戦が積み重なった結果です。

なので、私は「セブンイレブンを規模で追い越そう」などという考えは持っていませんでした。毎日少しでもいいからお客様にとって昨日よりも良い今日を、という積み上げが重要だと考えていました。その結果として、規模が拡大し店舗数でセブンを上回ることが重要だと考えました。

お金を出せば店舗は出せます。ただし質の伴わないお店は早晩破綻して行く。とにかく質のレベルアップこそが最優先事項と繰り返し全社に徹底しました。

例えば、幹線道路の向かい合わせでファミマとセブンがあったとしましょう。片方の車線で道路工事が入ったとすると、その側の店舗はダメージを受け、逆に逆車線側の店舗は恩恵を受けます。こんなの加盟店さんの実力でもなんでもありませんよね。環境が変わってしまったのです。

なので、加盟店と本部が一緒になり、始まる工事に合わせて人員や駐車場を増強したり、撤退・出店対策などをしていくことも極めて重要です。そんなことが全国の店舗で日常茶飯事的に起きている。そのように日々刻々と変化することを敏感に読み取り、いかに改善していくか。その積み上げが結果として会社の規模につながっていくのだと思います。右肩上がりで成長してきた時代はとっくに終わっています。今こそ、現場ニーズに合わせたきめ細かな対応が重要だと思います。
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文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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