BTS投入でも釜山万博の未来見通せず 日韓が国際イベントにこだわる理由

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韓国の男性7人組人気グループ、BTS(防弾少年団)が今月15日、釜山で無料コンサートを開いた。メンバー全員がそろうのは半年ぶりとあって、会場には内外から約5万人のファンが集まったという。知人によれば、ソウルと釜山を結ぶ高速鉄道KTXのチケットは完売、釜山周辺のホテルの値段は4~5倍高になった、無料なのに1枚50万ウォン(約5万円)以上も支払ったファンが、ダフ屋に逃げられる詐欺事件も発生するなど、BTSの超人気ぶりを見せつける大変な騒ぎになった。

そして、このコンサートには、韓国駐在の外交団が多数招待された。BTSは今年7月から、韓国が2030年の開催を目指す釜山国際博覧会(万博)の広報大使を務めているからだ。ソウルの外交筋によれば、アフリカのある国の大使夫人は「私にもっとチケットを回してくれたら、釜山万博に票を入れるわ」と本気なのかどうかわからない「申し入れ」をしたという。

そもそも、釜山万博は、若者の就職難や企業経営の不振にあえぐ地元財界が、地域経済の起爆剤として誘致したものだ。保守と進歩(革新)の両勢力が張り合う釜山・慶尚南道は、今年3月の大統領選ではキャスティングボードを握った地域。票欲しさの余り、尹錫悦、李在明両候補ともに、釜山万博誘致を請け負ってしまった。韓国政府からは「この21世紀に、万博を経済活性化の手段にするなんて、時代遅れも甚だしい」(関係者)という声も漏れてくるが、約束してしまったものは仕方がない。BTSを広報大使に起用するなど、韓国は国を挙げて万博誘致に取り組んでいる。

ただ、この勝負、BTSを投入したとしても、韓国には分が悪い。現在、2030年万博には、釜山のほか、ロシア・モスクワ、イタリア・ローマ、ウクライナ・オデッサ、サウジアラビア・リヤドの5つの都市が立候補している。大本命はリヤドだ。サウジアラビアは2030年を経済改革の目標年に据えた「ビジョン2030」を推進している。サウジの実力者、ムハンマド皇太子が直接指揮を執るビジョンで、万博誘致にも力が入る。日本政府関係者の1人は「サウジは資金力もある。何より、25年には大阪万博が開かれる。同じアジアの釜山にはなかなか支持が集まらないだろう」と語る。そのうえで、この関係者はこうも語る。「韓国ばかりを笑ってもいられない。国際イベントが好きなのは、日本も同じだから」
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文=牧野愛博

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