向き合って何を思うか? アートに触れるというウェルビーイング

作家・画家の大宮エリー(左)、「こゆ財団」代表理事の齋藤潤一(右)

ウェルビーイングを一過性のトレンドワードとせず、ビジネスでもライフスタイルでも、実践していくためにはどうしたらよいか。そんな問いのもと、9月17日から25日まで、東京ミッドタウンで「Wellbeing Lab 2022」が開催され、ヨガやアート、トークなどが展開された。

概念的で、定義が曖昧な言葉を具体化していくには、対話が有効だ。22日には、ウェルビーイングとアート、地域の可能性を探るべく、作家・画家の大宮エリー、地域商社「こゆ財団」代表理事の齋藤潤一によるトークセッションが行われた。

人の心に語りかけるアートを生み出す大宮に、ウェルビーイングはどう映るのか。大宮のファンを公言する齋藤は、アートと地域をどう結びつけるのか。モデレータは、Forbes JAPAN Web編集長の谷本有香が務めた。


谷本:ウェルビーイングという言葉は、昨今よく聞かれる一方、ウェルビーイングの共通概念はまだないとも言えます。まずはお二人がどのように捉えているのか聞かせてください。

齋藤:僕にとってウェルビーイングは、「want to」で生きることですね。「have to」を捨て、自分の望むことをし続けること。この数年、いかに「want to」で生きるかを模索しているのですが、僕が取り組む地域づくりは自己犠牲も多いからこそ、ウェルビーイングについて考えることが増えているのかもしれません。

大宮:実は私は今回のイベントをきっかけに、ウェルビーイングという言葉を知ったレベルです。いま勉強している立場ですが、イベントを前に何度かディスカッションして、自分なりに考え、(ミッドタウン内、別会場に)「ウェルビーイング美術館/Wellbeing museum」をつくりました。

個人的には、「よく生きる」とは何なのかと自問し続けることがウェルビーイングなのではないかと思っています。ただ、「よく生きる」と言っても受け止め方は人それぞれなので、今回の展示では明確な定義や答えは示さず、あくまでも私自身の考え方を一例として、詩のように紹介しました。


東京ミッドタウン アトリウムに出現したウェルビーイング美術館/Wellbeing museum

そこでは、その上で「あなたはどう思いますか」と問いかけ、来場者にポストイットに書き込んでもらう仕掛けにしました。そうして様々な人が考えるウェルビーイングを知ることも、考えるきっかけになるかなと。

「want to」の話をすると、私は自然がすごく好きなので、「自然のなかで生きたい」と思っています。でも、それだけで幸せになれるかというと、「これでいいのか」と心がワサワサしてしまいます。確かに楽しいものの、自分の役割を全うするという喜びは満たされないのではないか、と。

私は、人間は誰もが、何らかの使命や役割を与えられていると思っています。自分のやりたいことと役割の両輪が回ってこそ、ウェルビーイングも達成するのではないでしょうか。

齋藤:人間に役割があるというのは、いいキーワードですね。個人によって捉え方が違うという点でいうと、ウェルビーイングはアートと親和性がありそうです。
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文・写真=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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