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2022.10.28 14:00

カリフォルニアの象徴「ヨセミテ渓谷」の形成を科学者が解明

安井克至
1968

ヨセミテ国立公園の地質学者グレッグ・ストックは、同公園の象徴である花崗岩地形の成り立ちに関して語られている話は少々曖昧であり、それはあのシエラネバダの特徴的な花崗岩が、約8000万~1億年前の間に現在とは大きく異なる姿の山脈の下、深さ最大10キロメートルの地下で形成された後何が起きたのかに関して、地質学者の間で未だに合意が得られていないためだと説明した。

「シエラが1億年前に高い山脈で、当時深い地下で花崗岩が形成されていたことを私たちは知っています。そこは南米のアンデス山脈にも似た一連の火山でした」とストックはいう。「本当の疑問は、標高は当時からの侵食によって低くなり続けていたのか、ある程度低くなってから最近再び隆起したのかという点です。現時点で、私が研究生活のほぼすべてを通じて行ってきた研究に基づき、本研究によって裏づけられたのが、過去500万年の間に隆起が起こった証拠がたくさんあることです」

東シエラネバダの地震断層が高さ数キロメートルの断崖を作ったのと同時に起きたその隆起は、西側の斜面と川の勾配を強め、その結果渓谷の侵食が早まった。

「ヨセミテ渓谷の歴史の中で、数千万年存在したある種の渓谷、古代のシエラネバダに関わる川が削って作り出した渓谷がありました。そしてその後、過去約500万年の間に、西縁の隆起が川の勾配を強め、周囲の渓谷を深くしたのです」とストックは述べた。

「つまり、おそらくそれがヨセミテ渓谷の大部分を作り上げ、テナヤ渓谷を形作り始めたのだと思われます。そして過去200~300万年の間に、気候が寒冷化して氷河がテナヤ渓谷を通ってヨセミテ渓谷に流れ込み、さらに岩石を削り取って渓谷を深くしていきました。そしてヨセミテ渓谷については、大きく幅を広げました。このため、古いヨセミテ渓谷の要素の一部は今も存在しています。この最新研究は、この地形の大部分がこれまで考えていたよりも若いことを示していると私は考えています」

ストックは、公園の地質学者として17年の経験があり、ヨセミテ国立公園初の地質学者だ。彼はこの新しい研究によって、公園がヨセミテ渓谷の地質学的歴史ついて語る内容はは変わるだろうと述べた。

論文「Late Cenozoic deepening of Yosemite Valley, USA(後期新生代における米国ヨセミテ渓谷の深化)」はGeological Society of America Bulletin (2022)に掲載されている。資料はカリフォルニア大学バークレー校から提供された。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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