女性が持つさまざまな「顔」 キャリアの強みに

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新型コロナウイルスの流行がもたらした「大量退職」のトレンドは、まだ終わっていない。大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が行った国際調査では、5人に1人が年末までに今の仕事を辞めるつもりでいることが示されている。

転職の動機の一つには給料アップの願望もあるが、充実感が得られる仕事を求める人々が全く新しい仕事に挑戦し、「キャリアの第二幕」を始めることを考えるようになっている。

転職には一定の適応能力が必要とされる。新しい同僚は仕事のやり方についてこれまでの同僚とは違う考えを持っている。職務が変われば必要なスキルも変わる。新しい組織の風土に溶け込むのが難しいこともある。

しかし、人々が仕事をする方法と場所、そして理由が一変した今、より意義のある仕事を目指してキャリアチェンジをする人が成功するためには、自身が持つさまざまなアイデンティティーを活用する必要がある場合が多い。女性は概して、こうしたアイデンティティーの切り替えが得意であり、それにはある特別な理由がある。

女性は多くの「顔」を持つ傾向にあり、そのため多くのアイデンティティーを持っている。米国の著名な認知科学者シアン・ベイロック博士は、女性は新しい職場でのアイデンティティーの切り替えに適応する能力が高い傾向にあると語る。「女性は、家族の世話や仕事などで同時にいくつものアイデンティティーを持つ傾向にあることから、その切り替えについて考えやすい立場にある」

こうした適応能力は、職場で有利に働く。「複数のアイデンティティーを持ち、それぞれに喜びを見出すことができれば、心理的なゆとりになり得る」とバイロックは説明する。

例えば、マーケティング責任者としての仕事でつらい日があっても、家に帰れば親となり、子どもを抱き寄せることで充実感を見出すことができる。

また別の利点もある。「自分の中にあるこうした複数の側面に頼ることができる人は、自分はただ一つのものではないと思える」とベイロックは言う。その時々に合わせて自分の中の最適なアイデンティティーに頼れれば、より高い能力を発揮できる。

例えばある研究では、アジア系米国人の女性は、女性としてのアイデンティティーよりもアジア人としてのアイデンティティーが強調された場に置かれると、数学のテストで良い成績を収める傾向にあった。それぞれのアイデンティティーが持つポジティブ/ネガティブなステレオタイプが、パフォーマンスに違いを生んだのだ。
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編集=遠藤宗生

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