意欲ある若手社員を登用しチャンスを与える企業風土
優れた経営手法と意欲ある若手社員の登用で急成長を遂げているライズ・コンサルティング・グループ。2012年に創業した独立系の総合コンサルティングファームだ。New Tech、Digital、Fintech、新規事業、海外進出、戦略、M&A、業務改革、PMO、ITといった幅広いサービスラインを設け、多彩な業種の事業会社に対し、コンサルティングを手がける。来年IPOを予定している同社は、これまで年率40%前後で急成長を遂げてきた。
急成長の秘訣は3つのキーワード、「人材」、「独自の手法」、「稼働率の高さ」で示すことができる。まず人材について、CEOの北村俊樹は次のように説明する。「入社以来、第一線で活動してきましたが、その間、会社の成長に資する提案を創業社長に行ってきたところ、『次の社長は君がやれ』ということになりました。創業者は、国内大手コンサルティングファームで役員を務め、ライズでも黎明期から 会社の成長をけん引してきた人なので、若い私にも経営の経験をさせたかったのでしょう。やる気と実力があればチャンスが与えられる風土でしたから、私が社長になってからも企業が成長する最大の鍵は “人”にあると考えて経営に臨んでいます」
その言葉通り、北村は“社員のケイパビリティの最大化”が図れる環境づくりのために複数の制度を導入してきた。そんな同社の人材育成とコンサルティング業務の根幹を支えているのが、「One Pool制」と「プラクティス制度」だ。
代表取締役社長CEO 北村 俊樹
ロンドン大学卒業後、フューチャーアーキテクト、野村総合研究所を経て、2016年にライズ・コンサルティング・グループに参画。CIOアジェンダのアドバイザリー業務に加え、先端テクノロジーを活用した業務改革、組織再編、新規ソリューションの立ち上げを牽引。21年より現職。
One Pool制とプラクティス制度で社員のキャリア形成を支援
「One Pool制」は、担当する業界やサービスのセグメントを設けない仕組みで、若手社員は幅広い領域に興味・関心・情熱をもてる。一方で、コンサルタントは幅広い領域をカバーしなければならないため専門性を深めづらい。そこで新たに導入したのが「プラクティス制度」だ。
「興味ある分野や得意な領域の研究開発ができるグループに所属できる仕組みです。各領域で長年にわたり活躍しているパートナーが多数在籍しているので、彼らがリーダーとなり各プラクティスを立ち上げ、若手コンサルタントに教えています」(北村)
現在は「DX×タレントマネジメント」「システムトランスフォーメーション」「ヒューマンデベロップメント」「グリーントランスフォーメーション」「フィンテック/スタートアップ」など、10を超えるプラクティスが立ち上がり、対象領域の最新動向や専門知識を身につけるために創意工夫しながら自主的な学びを実践している。
また、組織運営や経営的な視点を養うための取り組みにも余念がない。その代表例が「施策コミュニティ」と「Young Board」だ。「施策コミュニティ」は、社内の組織改善などに取り組む有志のグループ。採用や人材育成、地方創生・SDGs、海外拠点設立など、社内外の課題解決に資する取り組みで会社の成長に貢献。「Young Board」は若手社員が自社の経営にかかわることができる制度で、実際に経営陣とディスカッションしたり、幹部以上の会議体に参加したりしながら経営の課題解決にあたる。
さらに、新事業創出を担う子会社ライズ・クロスを設立、市場拡大が予想される分野を対象に新事業にも着手している。
「この現代においては、あらゆる社会課題と経済活動が密接に結びつき、グローバリゼーションとデジタライゼーションによる社会環境の激変を背景にして、あらゆる企業や団体は『変革しきれるかどうか』が問われています。こうした時代に、コンサルティング人材はどの現場においても必要不可欠であると自負しています。
市場、技術、デジタル化、サプライチェーン、マーケティングなどがシームレスにつながる今後において最も必要な要素は『実行力』であり、我々の業界は『実行力』の養成機能を担えるはず。その土壌となるのは、『挑戦し続けることができる風土づくり』にあると考えており、最も大事にしている部分です。これからの10年、この日本や世界における事業変革の波に覚悟をもって『実行しきれる』人材を輩出し続けることがコンサルティング業界、そして弊社がなすべき使命。事業会社やIT企業、学術機関などさまざまなバックボーンを有する人々が、一度はコンサル業界を経てまた現場に戻って活躍する。そして、その中から21世紀を代表する起業家や経営人材が誕生するかもしれません」(北村)
3つのアプローチで生産性向上と社員のワークライフバランスを両立
急成長を支えてきた「独自の手法」と「高い稼働率」については、クライアントを第一に考える3つのアプローチによるところが大きい。まず、顧客と深くかかわりクライアントの現場に頻繁に足を運んでプロジェクトを進める「ハンズオン」。クライアントとの距離が近いことで意識や情報の共有が図れるため、迅速な提案や解決方法を提示できる。次に、クライアントの課題について領域を限定せずにどんな課題でも拾って解決策を提示していく「スコープレス」の実践。そして「モアザンレポート」である。同社は必要最低限の提案書や報告書しか作成しない。それよりも現場での実行を最優先するのだ。これら3つによって、競争力のあるコンサルティングフィーと、常にプロジェクトが動く高い稼働率を可能にしている。
「クライアントが我々に望んでいるのは、分厚い提案書や報告書ではなく『結果』です。ハンズオンだから現状認識の共有ができているので、ムダな提案書も作成せずに現場で実行していける。こうしたサービススタイルによって、多くのクライアントから信頼していただき、高い稼働率に結びついているわけです」(北村)
モアザンレポートにより生産性が飛躍的に伸びて残業がほとんどなくなるなど、優れたワークライフバランスの実現という好循環を生むことにもつながっている。ただ、見逃してはならないのは、新機軸の多くはコンサルタントが自ら学び、成長するためのきっかけづくりであり、コンサルティングファームの最大の財産は「人」であるという考えを実践するための取り組みであるということだ。
成長の要因は「若手に権限委譲し、責任ある仕事を任せる風土」と経営的な視点を得られる「自社の運営にかかわる仕組み」
日本経済の再生を担える人材を育成するという目標を掲げ、独自の制度や仕組みでコンサルタント育成を推進するライズ・コンサルティング・グループ。同社で活躍する3人の若手コンサルタントが、同社ならではのキャリアの描き方、学び方、そして若手社員ながらも会社運営にもコミットできる制度や仕組みについて話し合った。
興味ある分野を選べるため、キャリアの選択肢が広がる
―入社した理由を聞かせてください。
田代将登(以下、田代):私はStrategy&、リクルートの出身で、これまでいくつかの仕事を経験してきましたが、クライアントと近い距離で仕事ができる点と、ワークライフバランスを大切にする企業文化に惹かれて入社しました。
伊藤叶華(以下、伊藤):私は、人や社会に寄り添う仕事で自身を成長させたい、という思いから新卒で入社しました。選考では私の人となりを見ていただけるなど、人を大切にする会社だという点に魅力を感じました。現在は、新規事業を手がける子会社のライズ・クロスに出向しています。
川﨑夏実(以下、川﨑):私は大手飲料メーカー出身で仕事内容に大きな不満はなかったものの、もっといろんな仕事にチャレンジしたいと感じ、One Pool制で挙手すれば興味ある分野への仕事に挑戦できる環境に魅力を感じました。
田代:さまざまなプロジェクトを経験することで自分の志向性を確かめることができるのがいいよね。
伊藤:特に私のように新卒はありがたいですね。各業界の特徴を覚えながら得意分野を形成していけるので、キャリアデザインをするうえで大きなメリットがあると感じています。
―専門領域の知識を身につけられるプラクティス制度は?
田代:興味のあるグループに所属できるので、専門性を高めるのに役立っています。私は「DX×タレントマネジメント」に所属、毎月定例会を開催して、テーマ設定をしながら同領域の知識を学び合っています。
川﨑:「Manufacturing and Innovation」に所属しています。毎月、各コンサルタントが製造業のリードの状況を報告し、先進的な案件のナレッジを共有することで業界知見や実践的な解決手法などを学んでいます。
田代:学び方もグループごとに独自の方法を採用しています。自分たちで学ぶ方法も構築できるので自然と主体的になります。また、各業界に精通したパートナーが在籍しているので心強く、ありがたいです。
伊藤:仕事を通して、コンサルタントとして進むべき領域を絞り込むことができるので、キャリアの描き方も柔軟になります。
的確かつ迅速なパートナーのフォローが安心感につながる
―若手社員に権限委譲して仕事をどんどん任せるのも大きな特徴だと聞きました。
川﨑:はい。入社時からクライアントと直接コミュニケーションをとってプロジェクトを進行します。大企業では考えられないほど若手社員に任せる風土や体制が定着していて、Off-JTだけでなくOJTで仕事を覚えていくスタイルなので、成長スピードも早いと感じます。
伊藤:私の場合も新卒で入社し、当社独自の研修を1カ月受けたあとには、すぐにパートナーと二人三脚でクライアントの課題解決に当たりました。確かに何の知識もないところからフロントに立つのは緊張しましたが、やらされている感や不安はまったくありませんでした。
川﨑:同感です。ハンズオンでクライアントと近い距離で仕事をしますが、パートナーが同席し、すぐに的確なフィードバックをもらえます。だからパートナーから見守られているという安心感がありますね。
田代:単に仕事を任せるだけでなく、フォロー体制をしっかり築いている。しかもパートナーからのレビューがすぐに来る。そんな体制だからライズの若手社員は1年で数年分の仕事を経験できるので、成長スピードも驚くほど早いんだと思う。
残業がほとんどないのでプライベートも充実できる
―ワークライフバランスの充実も特徴のひとつですね。
田代:ベンチャーのコンサルファームで、若手社員でも即戦力として活躍できるというと、忙しくて残業が多いイメージをもたれるかもしれません。しかし、私の場合は平均して月20時間ほどしかありません。
川﨑:皆さん同じようにほとんど残業がないという状況ですよね。私は大手企業からベンチャーのコンサルファームへの転職だったので残業を覚悟していたのですが、いい意味でギャップがありました(笑)。
伊藤:やはり、ムダなレポートは作成しないという当社独自のモアザンレポートの効果は大きいですね。コンサルファームの仕事は膨大な提案書などを作成するというイメージがあったので、当社の仕事のあり方には驚きました。
田代:ハンズオンでクライアントとの意思疎通や課題解決の方向性の共有ができているから、わざわざ膨大な資料を作成する必要がない。その代わり単刀直入に優れた提案などが求められるけどね。
伊藤:まさに成果重視の仕事のあり方、そして社員のプライベートを大切にするライズならではの働き方ですよね。当然、社員はプライベートを大切にするのでメリハリのある働き方が自然にできて社内の活気にもつながっている気がします。
―経営陣と社員の距離も近く一体感のある組織だと伺いました。
川﨑:創業当時から続く人材育成方針を北村がより制度化したことで、社員が経営者目線をもてる環境づくりができていると思います。そのひとつが「施策コミュニティ」。会社経営上必要な機能を有志のコンサルタントが担い、活動しています。
田代:私も中途採用の戦略を考えるチームのリーダーとして活動しています。採用のための動画制作を監修したり、1日ですべての選考を行う「1Day選考会」などを企画したりしました。
伊藤:私は全社イベントの企画・設計をしました。社員の交流の活性化やエンゲージメントを高めるとともに会社の成長を促すリトリート企画を開催しました。非日常の空間を楽しみながら、チームごとに会社の経営課題を解決する方法をディスカションして考えるイベントで、多くの社員に参加してもらうことができました。
田代:川﨑さんは若手社員が経営層と直接対話し会社成長への提言や実行を推進する「Young Board」にも参加していますよね。
川﨑:インクルージョン&ダイバーシティの推進をテーマに会社の成長促進を図っています。今後、ライズがさらに成長していくために、あらゆる社員の働き方やキャリアなどの多様性を仕組みとして担保し、一人一人がより幸せに働ける組織にするためにはどうすればいいのか検討しています。
田代:今日、話題に出た取り組みはほんの一部で、当社の若手コンサルタントは、さまざまなプラティクス制度を活用してスキルを磨いたり、施策コミュニティを通して組織運営や社内改善に取り組んだりしています。そんな「人」が中心にいられる企業ですから、主体的に働きたいという方には最適な環境だと思います。
田代 将登
ライズ・コンサルティング・グループマネージャー。新卒でStrategy&(PwCコンサルティング戦略部門)に入社。その後リクルートなどを経て、2020年11月に参画。
川﨑 夏実
ライズ・コンサルティング・グループシニアコンサルタント。アサヒビールで営業企画を経験後、2020年10月参画。10周年記念事業実行委員長。FY22上期Young Boardメンバー。
伊藤 叶華
ライズ・クロススーパーバイザー。2020年10月に新卒で入社。22年4月より、新規事業を担当したいと自ら希望し、子会社ライズ・クロスへ出向。
ライズ・コンサルティング・グループ
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