ビジネス

2022.10.20 17:00

Forbes JAPANで出会った経営者たち 人を動かす「言葉の力」とは


彼はForbesの「スモール・ジャイアンツ」のピッチ会場で、アフリカでの活動の動画を流しました。雨が降ると真っ暗になって勉強ができなくなる学校です。粗末な建物の屋根に太陽光パネルを設置しました。そして暗い教室にスイッチを入れた瞬間、教室がパッと明るくなり、子どもたちがいっせいに大歓声をあげて飛び上がるのです。男の子も女の子も大喜びで飛び跳ねる姿を見ながら川口さんはこう言います。

「仕事をして、こんなに喜ばれたことは人生でなかったよ」

大人たちも喜び、街灯がない夜道に太陽光パネルの光が灯り、市場が生まれました。夜間の犯罪が減り、病院の窓から灯りが漏れるようになりました。そして、国連開発計画(UNDP)や国際協力銀行が協力を申し出てきました。

実は100号で取り上げた著名な経営者たちの数々の言葉の背景も、川口さんと同じなのです。それは次のプロセスです。

危機の中で主体的に行動を起こす。
大きな絵を描く。
誰を喜ばせたいか、誰を幸せにしたいかを考える。
その相手の立場になって理解を深める。
共創することで大きな発展が生まれる。
その先にある山頂をさらに目指す。

この道筋をたどりながら、経営者たちが考えていた点と点が線としてつながり、それがストーリーとなり、物語をもった言葉が心の中から発せられます。だから、インタビュアーとして聞いている方も心を揺さぶられて、「書ける」と思うのです。

心にスイッチが入った経営者の言葉に、周囲の人々もスイッチが入り、共感が生まれます。それが事業を生み出すモチベーションになり、世界中の人に喜ばれます。「人を動かす言葉」とは、そういうものだと思うのです。

「今、全然ダメじゃないか」と批判するのもジャーナリズムの仕事ですが、長期視点で見たときにそれはほんの点でしかなく、分かれ道を経営者がどちらに進むのかを見続けるのがForbes JAPANの仕事です。

自分の仕事は誰に喜ばれているか。自問自答する機会をつくったのが100号だと思っています(談)

【100号記念特集】カリスマリーダーたちからの「知恵の言葉」


Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春

文=久野照美 取材・編集=田中友梨

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