こうした著名な人々の言葉は、著名人だから「名言」が出てくるのではなく、険しい山道を登ってきた人間にしかわからない思いが言葉の背景にあり、共感を呼びやすいと思います。こうした言葉の数々は100号の記事をご覧いただくとして、私の脳裏に焼き付いている言葉を紹介しましょう。
佐賀県の川口スチール工業といっても知っている人はいないでしょう。前述した経営者たちと違って無名です。Forbes JAPANでは過去にも創刊2号で、当時無名だった宇宙ゴミを回収するアストロスケール(いまや世界的に有名な会社です)など、無名な経営者でも「面白い」と思って取り上げることがありました。
川口スチール工業は、私たちが主催する革新的な中小企業「スモール・ジャイアンツ アワード」でグランプリを受賞した社員数12人の小さな会社です。
「スモール・ジャイアンツ アワード」のイベントにて
同社は、工場など金属製屋根の設計施工が主業です。大手ゼネコンの下請けとして屋根をつくる「屋根屋」です。川口さんはこう言います。
「いつも目の前に仕事というニンジンをぶら下げられて、全速力で走らせられているいわゆる“奴隷”」だったと。値引きの強要で自殺を考えたこともあるといい、「請負って“請けて負ける”と書くよね? どんなに頑張っても下請けは下請け。大きな仕事を請け負っても、赤字になることもある」と言います。
川口スチール工業の川口信弘社長
しかし、屋根に設置する太陽光発電を推進する人々があまりにも屋根のことを知らないことが「屋根屋」の心に火をつけます。彼は環境ビジネスに着目。何度も失敗を繰り返しながら、パネル一体型の「フィルム型ソーラー」を開発しました。超薄型で軽量なので、藁葺き屋根だろうがトタン屋根だろうが道端の樹木に巻き付けようが、どこにでも設置できるものです。
そして、川口さんの薄型ソーラーを求めていた地域がありました。地球上の13億人が暮らす非電化地域です。その最も大きな市場がアフリカでした。