ビジネス

2022.10.21 17:00

森ビル元会長、森稔さん|私が尊敬するカリスマ経営者


理に合わないものは、変えればいい


六本木ヒルズは、環状3号線をまたぐように建てられている。ここは東京都、港区ともに用地買収がうまくいかず、道路整備を投げ出していた場所であり、建物が道路を覆うように建設されることは不可とされていた。それを森は、行政当局と粘り強く交渉し、地権者らも納得させた。“理に合わぬものを理に合うようにした”のだ。かかった歳月は17年。

森ビル本社の一角には、森がつくらせ始めた東京都心部の精巧なジオラマがある。新しいビルが建てば、ジオラマにもそれを加えていく。六本木ヒルズが竣工した際、森は感無量という面持ちで、ジオラマで更地になっていたその部分に、ヒルズの模型を置いた。森が二十歳のころから青写真を描いてきた“輝く都市”のそれは、まだ完成していない。

森 稔 年譜


1934 8月24日、京都高等蚕糸学校教授(当時)の森泰吉郎の二男として、京都府に生まれる。

1959 東京大学教育学部社会教育学科卒業。6月、父とともに森ビルを設立、取締役として入社。

1969 同社専務に就任。

1986 アークヒルズ竣工。

1993 泰吉郎の死去に伴い、森ビル社長に就任。

1999 森トラストが分離独立、弟の森章が社長就任。

2003 六本木ヒルズ竣工。

2008 地上101階の超高層ビル「上海環球金融中心」竣工。この年、Forbes世界長者番付に森が1062位で初登場。

2009 名誉大英勲章KBE受賞。

2011 森ビル会長に就任。

2012 3月8日、77歳で死去。


松本恭攝◎1984年、富山県生まれ。慶應義塾大学卒業後、A.T.カーニーに入社。印刷業界の革新を志し、2009年にラクスルを設立。13年よりネット印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」、15年より物流プラットフォーム「ハコベル」、20年よりマーケティングプラットフォーム「ノバセル」、21年よりコーポレートITの「ジョーシス」のサービスを展開。22年よりジョーシス代表取締役社長を兼任。

児玉 博◎1959年生まれ。大学卒業後、フリーランスとして取材、執筆活動を行う。2016年、『堤清二「最後の肉声」』で第47回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。単行本化した『堤清二 罪と業 最後の「告白」』の ほか、『起業家の勇気 USEN宇野康秀とベンチャーの興亡』『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』など著書多数。

文=児玉 博 イラストレーション=フィリップ・ペライッチ

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事