投資家が現金に退避する背景には、金融安定性リスクをめぐる懸念が過去最高に高まっているという事情がある。バンク・オブ・アメリカは、米国株はこうした懸念がかなりの重しになっており、世界の金融問題に対して反応しやすくなっていると指摘している。投資家心理を測る指標で「恐怖指数」とも呼ばれる米国株の変動性指数(VIX)は、約4カ月ぶりの高さに跳ね上がっている。
計1兆1000億ドル(約164兆円)の資産を運用する世界のファンドマネジャー371人を対象とした今回の調査では、市場の流動性が過去1カ月で「著しく悪化」したことも明らかになった。過去にこれほど悪化したのは、2020年4月にコロナ禍の影響で低下した際と、2007年に始まった世界金融危機時しか例がないという。
バンク・オブ・アメリカのアナリストは、株式相場は今後「大底」を打ったあと、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ終了が見込まれる来年前半には「大幅な上昇」に向かうとの見通しを示している。
調査では、投資家の景気見通しが依然として弱気一色に近いこともわかった。向こう1年で景気が悪化すると予想するファンドマネジャーは全体の72%に達し、7月に記録した過去最高に迫る比率だった。
世界の中央銀行は今年、インフレの長期化によって積極的な利上げを余儀なくされており、投資家はその影響による景気減速に身構えている。こうしたなか、株式相場は大きな打撃を受けており、昨年27%上昇していたS&P500種株価指数は今年に入り20%超下落している。モルガン・スタンレーはS&P500はさらに10〜20%下がり、最終的に3000~3400ポイントで弱気相場の底を打つと予測している。
バンク・オブ・アメリカの調査によると、景気拡大が終わりに近づいているとみる投資家の割合は9月に67%と、6月につけたコロナ禍後のピークの80%から下がった。ただ、過去のデータでは、比率がこのように大幅に下がった際にリセッション(景気後退)は起きる傾向にあるという。