資金をほとんど使わずにビジネスを立ち上げた、大学受験の塾がある。それが、竜文会(福岡県・福岡市)だ。地元・九州大学の受験に特化した塾で、2020年に創業。起業からわずか2年で、生徒数は約30人となっている。
創業に賭けた費用は、教室の家賃や礼金などを含めても60万円程度。広告費を使っていないにも関わらず、熊本や宮崎など九州じゅうから生徒が集まってきている。竜文会は、まさに「地方で資金をかけず、ネットを活用して、ゼロからスモールビジネスを立ち上げる」というノウハウが詰まった成功例だろう。
25歳で医師を辞め起業の道へ
竜文会を立ち上げた中原遼太郎氏は、学習塾業界では異色の経歴だ。下関の公立中学を卒業後、鹿児島県のラ・サール高校に入学。高校入学組としてはトップの成績をとったこともある秀才だった。そして、現役で九州大学医学部に合格。卒業後は医師免許を取得し、聖路加国際病院で勤務医を勤めた。
だが、安定した高給が保障される医師の道を止めて起業を決意する。その理由を中原氏はこう語る。
「医師というのは多くの場合、比較的、高齢の方の病気を治すことが日々の仕事となります。それも大変意義のあることなのですが、私は若い人を育てることに自分の人生を賭けたい。そう思うようになり、大学受験の塾を起業することにしたのです」
当時はまだ25歳で、勤務医になって間もなかっただけに、手元に貯金はほとんどなかった。どうしたら大手がひしめく業界で生き残ることができるのか。考えた結果、着手したのが、ブログによる集客だった。
ブログを育てた3つの方法
現在、竜文会のブログの月間PVは約3万、訪問者数は1万5000程度。有名ブロガーなどと比べると大した数字ではないが、ブログ経由での入塾問い合わせが多いのが特徴だ。新入学の季節には30件近くに達し、ブログの閲覧から問い合わせに至るコンバージョン率は驚異的。入塾シーズン以外にも入塾希望の問い合わせが安定して舞い込んでいる状況だ。
「ブログを活用して生徒を集めることにしたのは、とにかく費用がかからなかったからです。とはいえ、ただ漠然と記事を書いても、誰にも読んでもらえません。そこで、綿密に作戦を立てることにしました」