畜産業に携わる方は日本を含め世界に大勢いるため、どのような影響があるか考えるべきなのは確かだろう。今回は、ヴィーガンの増加による畜産業への影響について、筆者の考えをまとめていく。
畜産業が減っていく前提で動く
結論から言うと、畜産業の方々が職を失うとしても、地球の未来のために動物性食品を減らさなければならないとすれば、その前提で動く必要があると考えている。
非情な意見に聞こえるかもしれないが、AIの発展によって多くの仕事が消えるといわれているのと同じで、不可逆的な時代の変化なのだ。
とはいえ、SDGsが「誰一人取り残さない」を理念としているように、変化に乗り遅れそうな人々をサポートするのは大切である。
畜産業がサステナブルではない理由
現在の畜産業がサステナブルではないとされている主な理由は、その環境負荷の大きさにある。
CO2換算で年7.1ギガトンもの温室効果ガスを排出しており、これは人間の活動によって排出される量の14.5%に相当する。すべての乗り物を合わせた排出量とほぼ同量なのだ。
当然だが、家畜は生き物だから食事のほとんどは生きるために消費される。1kgのステーキ肉を作るには、25kgの穀物と1.5万Lの水が必要になる。
世界中でヴィーガンが増加中
環境問題や動物福祉、健康への意識の高まりから、世界中でヴィーガンが増加し続けている。
観光庁の資料によると、ベジタリアン・ヴィーガンの年平均増加率はアメリカ(中南米を含む)が3.9%、ヨーロッパが2.6%となっており、2018年には全世界で約6.3億人に達している。
まだ少数派であり理解が広まっていない現状もあるが、着実にスタンダードになりつつあるだろう。
畜産業による貧困削減
ここまでは畜産業の問題点ばかりに目を向けてきたが、畜産によって救われている人々もたくさんいることを忘れてはならない。
国連食糧農業機関(FAO)によると、地球に住む9億人以上の極貧困層(1日当たりの所得が1ドル以下)の人々のうち、約半数が生計を畜産に依存しているそうだ。
貧困な人々にとって家畜は主要な収入源であり、同時に質の高い栄養素の供給源にもなっているのだ。