具体的な手法の一つは、アメリカミズアブという驚くべき昆虫の助けを借りることだ。この幼虫は、さまざまな有機物のなかで成長する。のちにこれらを回収し加工することで、栄養価の高い家畜飼料やペットフードの原料になるのだ。
このアプローチはすでに、果実や野菜の栽培に伴う副産物処理および消費者レベルの食品廃棄物処理への大規模な導入が始まっている。昆虫由来タンパク質の市場規模は、2021年に推定3億4300万ドルだったが、2027年には13億ドルへの成長が見込まれている。
ニュートリション・テクノロジーズ(Nutrition Technologies)という企業は、アメリカミズアブを使ったアップスケーリングシステムを拡張し、共生細菌の「パートナー」を利用することで、アブラヤシなどの熱帯作物の副産物の大規模なアップスケーリングへの応用に取り組んでいる。
マレーシアのジョホール州にある同社の生産施設は、通常は廃棄される数百トンの有機物から、高品質の家畜飼料やバイオ肥料を生み出している。同社は最近2000万ドルのベンチャー資金を獲得し、これを元手に、東南アジアの別の場所に生産拠点を立ち上げ、新製品の開発にあたるとしている。
アメリカミズアブを使ったアップスケーリングの典型的な工程では、処理すべき有機物を最初に滅菌し、そこにミズアブの幼虫を加える。
ニュートリション・テクノロジーズの共同創業者で共同CEOを務めるニック・ピゴット(Nick Piggott)によれば、野生下でのこの昆虫は、分解が始まった有機物のなかに産卵する。孵化した幼虫は、すでに一部が微生物によって分解された状態の餌を食べる。つまり、幼虫の消化管は、こうした微生物の力を借りているわけだ。
このモデルに基づき、ニュートリション・テクノロジーズでは、アブラヤシの絞りかす、酒造業者の穀物廃棄物、大豆パルプが混合された、滅菌されていない飼料原料に、特定の株の細菌を加えた。
同社が選んだ細菌は、もともと存在する細菌個体群との競争に打ち勝ち、ミズアブの幼虫がアブラヤシの副産物を消化するのに利用できる酵素をつくりだす。この段階のプロセスは熱帯で進むので、他の地域でおこなわれるような加熱は必要ない。
成長サイクルの最終段階に至ると、幼虫はフラス(昆虫の排泄物)から分離され、粉砕され、低温殺菌されたあと、圧搾して油脂を抽出される。絞りかすの「プレスケーキ」は、再び粉砕され、高タンパク(粗タンパク質50%以上)の粉末となる。