ITを武器にクライアント企業の未来価値の最大化を目指す
時代を先取りし、急速な変化をチャンスととらえ、テクノロジーでお客様にとって“最適解”を提供してきたフューチャー。日本企業の未来を支えてきた同社のコンサルティングはなぜ生まれたのか、この先どのように展開していくのか、取締役CTO 齋藤洋平に語ってもらった。
「経営とITをデザインするのがフューチャーのアイデンティティです。創業者で代表取締役会長兼社長の金丸恭文と取締役副社長の石橋国人が技術者だったこともあり、テクノロジーを武器にしてお客様の未来価値を最大化することを追求してきました。私たちの技術力を生かし、他社にはない、柔軟で即時性のあるコンサルティングを実現してきたのです」
エンジニアでありコンサルタントでもあるフューチャーが最適な技術を選び、組み合わせて設計。企業がパラダイムシフトを目指したときにこれらを総合的にデザインすることで、戦略、立案、実装まですべてを一気通貫で提供してきた。
フューチャーは、探求心とテクノロジーの目利き力を強みにDXを推進することが日本の未来を切り拓く鍵だと考える。その代表的な事例として挙げられるのが、「次世代バンキングシステム」と日本瓦斯(ニチガス)のDXだ。
全国30行以上の地域金融機関での実績を通じて、銀行業務の性質上刷新が難しい勘定系システムの研究を10年以上続けてきた。2021年にSBIグループの協力を得て開発をスタートさせた「次世代バンキングシステム」は、地域金融機関に求められるバンキングサービス全体を再定義し、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できるサービスを提供する。
ゼロベースで最適を追求したクラウド型「次世代バンキングシステム」は、24年に福島銀行で本格稼働し、地域の活性化・DXを推進する。
一方、ニチガスでは、ガス業界初となるデジタルツインシステム(ニチガスツイン)の実現を支援。現実空間で得たデータをサイバー上に集積することでさまざまなシミュレーションを可能にする技術概念だ。これにより世界最大規模のLPガスハブ充填工場「夢の絆・川崎」では、需要予測に基づいた充填の自動化が進み、配送の最適化が実現した。
この仕組みを全国のガス会社にも提供することで、新たなエコシステムの構築とCO2排出削減にも貢献する。まさに真のDXを果たしたニチガスは、経済産業省などによる「DX銘柄2022」のグランプリに選出された。
「この2つのプロジェクトに共通するのは、両社とも社会的なインフラを担っているとともに、地域に貢献するビジネスだということです。DXの導入が地域の活性化やサスティナビリティにもつながる社会的意義のある案件です。クライアントからも、もてる技術をもとに経営課題を解決するシステムをトータルでデザインしてつくり込めるのはフューチャーだけと高く評価され、私たちの強みが存分に発揮できたと感じています」
「フューチャーの社員は、うちの社員よりうちの業務に詳しい」と言われることが多くあるという。プロジェクトの社員がテレビ会議にヘルメットで参加。理由を聞けば、お客様の工場内を走り回っていたそうだ。現場を知るのが、コンサルティングでは大切だとも語る。
小さくても勢いがあり若さもチャンスに変えられる
齋藤の入社は2001年。大学院で人工知能を研究していたが、研究所に閉じこもる日々に飽き足らず、よりダイレクトに、インタラクティブに社会とコミュニケーションができる仕事にかかわりたいという思いから、フューチャーを選んだ。
「小さくても勢いがあって、ユニークな会社で腕試しをしたいという気持ちがありました。面接時に金丸が言っていた『若い人にチャンスを与えたい』との言葉が決め手になりましたね。会社見学もしたのですが、まるで動物園みたいに多種多様な社員がいて...(笑)。これは面白そうだと思いました」
“若手にチャンスを”の言葉にうそ偽りはなく、齋藤は入社3年目に早くもヨーロッパに派遣され、大手自動車メーカーの現地法人とアメリカのベンチャー企業との共同事業のプロジェクトリーダーを任された。帰国後は、フューチャーの重要な顧客となる佐川急便の全社システムを刷新する技術責任者にも抜擢。
「宅配便のシステムは常時稼働状態で止まることが許されないため、扱うデータ量はこれまでのプロジェクトとは比べものにならないほど膨大でした。このシステムを一からつくり替えることは私が経験したなかで、いちばん苦労したプロジェクトといえるでしょう。それだけに、私をいちばん成長させてくれたプロジェクトでもありますね」
若い人にチャンスを与えたいという社風は、いまも変わらない。フューチャーには、クライアントの課題をリサーチするため積極的に現場に飛び込む文化がある。齋藤も実際の業務フローを学ぶために佐川急便の配送トラックの助手席に乗ったこともあった。自ら体験し、情報を得ることでクライアントを理解するのだ。
現在、フューチャーはグループとしてITコンサルティング&サービスとビジネスイノベーションの2つの事業を展開する。後者には、アナリシスの専門会社やeコマース、出版社など一見コンサルティングとは無関係な会社が揃う。
「コンサルティングのキャリアを積むうちに、経営サイドに立って、当事者になりたいと思う社員も出てきます。そうした社員の受け皿になるとともに、自らオリジナルのデジタルサービスやアイデアをつくり、社会に提供していくのです。成果をコンサルティングにフィードバックするのが狙いでもあります」
ビジネスイノベーション事業は、キャリアダイバーシティの一環だ。「数年前の新卒採用時に『難題を楽しむ』というキャッチコピーを掲げました。ただ、難問はガッツだけでは解決できません。サイエンスの知識や技術は必須ですし、なによりチームワークが重要です。チームに対する愛があって、ともにいい“社会”をつくろうと思っていないと取り組めないでしょう。フューチャーはチャンスに満ちているうえに、圧倒的な成長ができる会社でもあると自負しています」
フューチャー
https://www.future.co.jp
齋藤 洋平◎1977年生まれ。東京工業大学大学院情報理工学研究科修了後、2001年フューチャーに入社。技術応用戦略室長、執行役員、スタンフォード大学客員研究員などを経て、2018年より取締役CTO。公益社団法人経済同友会幹事。