コンサルの仕事を通じて日本経済に影響を及ぼす
10代のころからサイバー犯罪への対処などを行うホワイトハッカーとして注目を集め、いま、コンサル業界にその名を轟かせている人物がいる。EYストラテジー・アンド・コンサルティング(以下、EYSC)にて、今年、最年少で最高職階のパートナーに就任した西尾素己、その人だ。
12歳からホワイトハッカーとして活動してきた西尾は、高校3年への進級を前に、家庭の事情により高等専門学校を中退。その後、17歳からWebベンチャー企業で働き始めるも、ホワイトハッカー時代の活動が呼び水となり、コンピュータセキュリティ製品を販売する世界有数のセキュリティベンダーや国内大手IT企業の最高情報 セキュリティ責任者(CISO)補佐へと転身。2016年に世界的コンサル・ファームへの転職を果たし、19年からはEYSCに籍を移した。
現在、西尾が率いるチームでは「安全保障」を軸として、日本の省庁といった公共セクターでのサイバーセキュリティを含めた防衛技術の調査・開発、世界的有事下での事業継続プランの構築をはじめとした地政学的な経済安全保障の戦略策定などを行っている。世界情勢やサイバーセキュリティの最新動向を踏まえて、日本政府や各企業といった国防から経済に至るまでの安全保障におけるルール設計を、コンサルタントの立場から働きかけていく仕事だ。
「コンサルタントに転職したきっかけは、現在も師事する上司の國分俊史の活動に触れたことでした。國分はコンサルタントの仕事を通じて、日本経済に影響を及ぼ すことで日本という国をよりよくしようという強い思いをもっている。現在我々が『よりよい社会の構築を目指して』というパーパスのもと、官民問わず安全保障の領域を手がけているように、日本経済に影響を与えるレベルまでスケールした業務を手がけています。
コンサルティング業務ではクライアントの行き詰まっているプロジェクトに対して、世の中の情勢を先取りして戦略策定から実行までを提案します。ひとつのプロジェクトを通じて、その企業文化も理解した上で企業に即したアプローチを行うことで、企業の意思決定や実行プロセスといった企業体制の改善を直に感じることができる点に、魅力を感じています。
国家からいち企業まで、自分の仕事が世の中にどう響いているのかという実感を得やすいのが、コンサルタントという職業の醍醐味ですね」(西尾)

また、前述の通り異色の経歴をもつ西尾は、年齢や性別をはじめとした“無意識の偏見”が取り払われたEYSCのフラットな社内風土にもマッチしたと話す。中でも、その特色として挙げるのは、個人の資質だけでなく“チームとしての能力”を問うという評価軸だ。同社ではそれぞれ専門的なバックグラウンドをもった多様な人員でチームを組成しており、人事評価においても直近の実績だけでなく、長期的なキャリアを見据えた独自の評価基準を設けている。そこでは、人間性からチーム内での役割、ロングタームでの能力が360度評価で査定されることとなる。
これはもちろん、実績が軽んじられるということではない。グローバルに展開するコンサルティング・ファームのEYSCでは、海外での案件も多数扱っており、現地法人との密なコミュニケーションも日常茶飯事だ。一般的なファームでは国外プロジェクトの売上は現地法人の実績としてカウントされがちだが、同社では日本チームの実績として認められるという。EYSC全体を通して、多元的で公平性の高い人事評価を重んじていることがわかる。
EYSCだからこそ実現できる“セキュリティ”ד経営・経済”
EYSCにて日本のセキュリティ・経済の最前線で活躍を続ける西尾だが、同分野においてコンサルタント業界が抱える課題について、次のように指摘する。
「現在、多くのファームがサイバーセキュリティ分野を手がけていますが、中にはセキュリティ領域の技術者を引き抜いた上で、必ずしもコンサルティング・ファームでなくても提供できる対症療法的なビジネスを展開しているところも見受けられます。しかし、コンサルティング・ファームで本当に求められているのは、発展的な経営のための“攻め”のセキュリティです。
つまり、単体でセキュリティ・サービスを提供するのではなく、他分野と組み合わせた先進的な施策への取り組みを打ち出すことで自社マーケティングの優位性を確立したり、ひいては政府がまさにいまから着手しようとしているような経済安全保障の取り組みにも早期に参画できます。このようなビジネスモデルによって多分野でしっかりとした基礎研究の出来るレベルの人材を活躍させることが可能となり、日本経済にとっても働く人にとってもよりよい世界をつくり出すことができる。“セキュリティ”と“経営・経済”をかけ合わせられることこそが、コンサルティング・ファームの強みなのだと思います」(同)
特定の“正しいキャリア感”など存在しない
最後に、26歳にしてEYSCのパートナーにまで駆け上った西尾は、コンサルタントを志す若者に向けて、自身を振り返りながら言葉を続ける。「僕はまだ社会に出て 10年で、周りの人からは『すごいスピードで出世した』と言われることも少なくありません。でも、最近思うのは、僕が一足跳びで進んできた時間というのは取り戻せない時間でもある、ということです。僕には新卒の同期もいなければ、長い下積みによって醸成される『深み』といった資産を持ち合わせてはいません。一足跳びで来たからこそ、自分が持っていないモノが見える瞬間があるんです。
いまは『生き急いでもいいことはひとつもない』と思っていますし、同時に、僕自身がそうであるように、『正しいキャリア観』なんて存在しないと感じています。 何かにチャレンジしたいと思った時に、自身が置かれている環境や挫折もまた、ひとつの財産になりえます。僕の場合、爆速でここまで来たことによって、こうやってメディアに出て、自分の考えを発信できるようになった部分もある。
こうした自分の経験を踏まえ、今後もサイバーセキュリティの専門家として、そしてコンサルタントとして日本のセキュリティ産業や経済に資する活動を続けていきたいですね」(同)
EY Japan
https://www.ey.com/ja_jp
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 採用サイト
https://www.eysc.jp/recruit/
西尾 素己◎EYストラテジー・アンド・コンサルティング ストラテジック インパクト パートナー。17歳で就職して以降、2社のITベンチャー企業で新規事業の立ち上げを行った後、国内セキュリティベンダーで幅広い領域への脅威分析と、未知の攻撃手法やそれらに対応する防衛手法の双方についての基礎技術研究に従事。大手検索エンジン企業でサイバー攻撃対策や社内ホワイトハット育成などに従事した後、2016年よりコンサルティングファームに参画。19年にEYSCへ転職、22年7月より現職。



