ペロトンを在宅エクササイズ業界のディスラプター(破壊者)にしたのも、まさにこうしたオンライントレーニングだった。だが、同社が何千人もの人員を整理し、巨額の損失を計上し、最高経営責任者(CEO)を交代させ、ピーク時の時価総額の95%を失うなか、オンライントレーニングサービスも打ち切りにするのではと考えるのは自然な反応だろう。
「人々がそうした懸念をいだいているのは間違いないでしょう」とBMOキャピタル・マーケッツのシニアアナリスト、シメオン・シーゲルも言う。「ペロトンの問題は(会社の)存続にかかわるものというよりは財政面のものとみられますが、こうした懸念をもつのはもっともだと思います」
シーゲルは、とくにペロトンがお金を稼げるのであれば、同社の機器が近いうちにサポートされなくなるという事態にはおそらくならないだろうと予想する。「問題はペロトンが消滅してしまうのかどうかですが、ペロトンがどのような形態をとることになるにせよ、月額料金は誰かが徴収し続けることになるでしょう」
ペロトンは、手元の現金を保持するために思い切った措置を講じてきた。同社がこれまで実行を控えている経費削減としては、今後3年度で計2億9900万ドル(約445億円)を計画する音楽著作権契約向けの支出が注目される。ただ、ペロトンの広報担当者は、この支出は削減対象ではないとしている。
ペロトンのベン・ボイド上級副社長(グローバルコミュニケーション担当)はフォーブスの取材に「わたしたちが決意しているのは、会員や、今後会員になってくれるかもしれない人たちの体験を広げ、豊かにしていくということだけです」と説明。同社にとっての「最大の差別化要因」に注力しているとし、音楽はその一つだと強調している。
ペロトンをめぐっては買収観測も浮上しているが、そもそも買収対象としてふさわしいのかや、買収によってインタラクティブなサービスに影響が出るのかどうかについては、アナリストの間で意見が分かれている。
パイパー・サンドラーのシニアリサーチアナリスト、エドワード・ユルマは、ペロトンのフィットネスバイクをいま購入しても、今後もサポートを受け続けられるだろうと述べている。
一方、ニュー・コンストラクツのデビッド・トレーナーCEOはフォーブスの取材に、ボウフレックス(Bowflex)やノルディック・トラック(Nordic Track)といった競合他社はペロトンが開拓したデジタル技術をすでに採用していると指摘。そのため、より高価なペロトンが現在の形で事業を継続するのは難しくなっていると解説する。
トレーナーは「ペロトンは登場した当時は贅沢品として楽しめ、流行にもなったと思うが、バブルは弾けてしまった」と述べ、同社の買収に関心をもつ企業が出てくることに懐疑的な見方を示している。
(forbes.com 原文)