ピーター・ティールが地中海マルタの国籍を狙う謎めいた理由

ピーター・ティール(Photo by John Lamparski/Getty Images)

ペイパルの共同創業者で共和党の大口献金者として知られるピーター・ティールが、地中海の島国マルタの国籍を申請したと10月15日のニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じた。しかし、彼の動きの背景にある意図はまだ明確ではないようだ。

NYTによると、マルタの当局は、居住地が賃貸住宅の申請者からの申請を認めないとされるが、申請書類に記載されたティールの住所は、エアビーアンドビーで一泊180ドルの物件のものになっているという。

NYTは、ティールが仮にマルタの国籍を取得してもさほどの税制上のメリットはないが、米国からの逃避場所になると指摘した。彼は米国の民主党政権が向かっている方向に極度の不満を示しており、数十億ドルの保有資産を共和党候補らに注ぎこんでいる。

保守派のリバタリアンを自認するティールは、パランティアとペイパルを共同創業し、2月までフェイスブックの取締役を務めていたが、11月の中間選挙を前に、共和党のキャンペーンにおよそ3000万ドル(約44.7億円)を注ぎ込んだとポリティコは報じていた。彼が支援する候補者には、アリゾナ州から出馬するベンチャーキャピタル仲間のブレイク・マスターズ(Blake Masters)や、オハイオ州のJ・D・バンス(J.D. Vance)らがおり、いずれもトランプ前大統領の推薦を受けている。

ティールは、2011年にニュージーランド国籍を取得しており、マルタの国籍を取得すれば、彼にとって3つ目のパスポートとなる。フォーブスは、ティールの保有資産を42億ドルと推定している。

ベンチャーキャピタル「ファウンダーズ・ファンド」のパートナーで、イーロン・マスクのスペースXやストライプの初期投資家でもあるティールは、2月に中間選挙で共和党候補を支援するためにメタ(旧フェイスブック)の取締役を辞任していた。

民主党寄りのテック業界で「異端」の存在感


ティールは、2016年の大統領選挙でトランプ陣営の最大の献金者の一人となり、スーパーPACと直接寄付で125万ドルを寄付していた。また、同年の共和党全国大会では自身がゲイであることを宣言すると同時に、トランプへの支持を明確にした。

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彼は、民主党寄りのテクノロジー業界で共和党を支持し、自らが同性愛者でありながらも、反LGBTQ的な主張を行うトランプ前大統領を支持している。

ティールは、2011年にニュージーランドの国籍を取得したが、この件は2017年になって初めて明るみに出た。ニュージーランドの当局は通常、同国に永住している、もしくは永住する予定の者のみに国籍を与えるが、ティールに関しては例外的措置をとったとされている。

ワシントンポストが13日に報じたところによると、今年初めの共和党予備選挙でマスターズの選挙運動に1500万ドルを投じたティールは、アリゾナでのマスターズの選挙運動にさらに500万ドルを費やす予定という。一方、バンスの選挙戦に関して彼は、すでに最後の寄付を行った可能性がある。

CNBCは今月初め、最近の世論調査でマスターズが現職のマーク・ケリー上院議員(民主党)を引き離し、オハイオ州でもバンスが民主党候補に僅差で勝っていることを受けて、ティールがアリゾナ州の上院選に資金を集中させようとしていると報じていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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