松任谷由実50周年と曲順格差。『ビュッフェにて』の後が『夕闇をひとり』だった頃

デビュー50周年を迎えた松任谷由実(写真は2003年8月、ザ・リッツ・カールトン東京で (Photo by Jonathan Wong/South China Morning Post via Getty Images)


直撃世代は語る


本記事を執筆するにあたり、直撃世代の方に話を聞いた。その方は時代によって異なる松任谷由実の「知り方」の違いに驚きつつ、当時の思い出、特に1981年にリリースされた12枚目のアルバム「昨晩お会いしましょう」について以下のように語ってくれた。
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学校から帰ってまずは「昨晩お会いしましょう」のA面1曲目(タワー・サイド・メモリー)を聴き、ひっくり返して(笑)「カンナ8号線」を聴く頃におやつの時間、みたいな感じでしたし、「ビュッフェにて」が終わると、次の「夕闇をひとり」のイントロが脳内で自動再生されていました。

こういった話を聞き、筆者にはふとした気付きがあった。それは「曲順」に対する感覚である。

アルバムの順番、自分の「曲順」?


デジタルオーディオプレイヤーやスマートフォンの進化、そして何よりも音楽配信サービスの登場で音楽を聴く環境は大きく変化した。その中でプレイリストや楽曲のシャッフルなどといった機能が強化され、自分好みの「ベストアルバム」を作成するのが格段に容易となったのだ。カセットやCDでも同じようなことができたが、やや手間のかかる作業だった。
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今では指先一つで様々なアーティストの楽曲を組み合わせた「ベストアルバム」を作ることができる。それだけでなく、音楽配信サービスを使えば自らが作ったプレイリストを全世界へ公開することも可能だ。若い世代、とりわけZ世代は当然のように使いこなしているだろうが、ほんの10年前には存在すらしていなかったのだ。

現代では、曲の順番を決める主導権がアーティストからリスナーへ渡ったといえるかもしれない。それが良いか悪いかは別として、かつての音楽ファンがアルバムの曲順というものを、今より重要視していたのは事実だろう。曲同士の繋がりが、思い出と強く結びついていたのだ。

当然ながら、音楽配信サービスでもアルバムの順番通りに聴くことができる。それに加える形で、あらかじめ決められた曲順に囚われない聴き方が、簡単にできるようになったわけだ。選択肢が増えたと捉えるべきだろう。もしかしたら、Z世代の若者にとっては自分たちで作りあげた「曲順」こそが後々の思い出になるのかもしれない。

何より、音楽を取り巻く環境が変わっていった50年のあいだ、松任谷由実は最前線で駆け抜けた。ゆえにオリコン史上初の6年代連続1位という快挙を成し遂げたのだ。それこそが、彼女が時代を超えて愛される唯一無二のミュージシャンである証拠であるといえるだろう。

松任谷由実の楽曲は2018年より各種音楽配信サービスでの提供が解禁されている。ほぼ全曲が配信されているようだ。もちろん、それぞれのアルバムをお好みの順番で聴くことができる。50周年に際し、直撃世代の方々は当時の思い出に浸ってみるのはどうだろう。Z世代の方々も、これを機会に一度松任谷由実の世界に、直接触れてみてはいかがだろうか。



松尾優人◎2012年より金融企業勤務。現在はライターとして、書評などを中心に執筆している。

文=松尾優人 編集=石井節子

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