自由のために「代償を払う」イランの女性たち

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イランの「道徳警察」に拘束された22歳のマフサ・アミニの死は、世界中に衝撃を与えた。国連が発表した声明によると、髪を覆うことと定めた服装規定に違反した(「ヒジャブ」のかぶり方が不適切だった)として9月13日に拘束されたアミニは、拘置所で昏睡状態に陥り、16日に病院で死亡した。

イラン当局はアミニの死因について、「心臓発作」だと発表した。だが、実際には拷問や虐待が原因ではないかとも伝えられている。道徳警察はこれまでも、拘束するとの脅しや暴力やを使って、公の場での女性の服装や行動を統制してきた。

国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルは、道徳警察は「髪を隠さなければならない」という法律を理由に、女性や少女を無作為に「拘束、拷問し、虐待している」と指摘している。

アミニの死をきっかけに始まった抗議デモは、イラン全土に拡大している。首都テヘランをはじめ、ケルマンシャーやタブリーズなど、各地で数千人規模のデモが続いている。参加者らはアミニの死に対する説明責任が果たされることを要求すると同時に、女性に対する暴力や差別をなくすこと、ヒジャブ着用を強制することをやめるよう訴えている。

増え続ける死者数


当初は平和的に行われていた抗議デモに、当局は過剰な武力で対応した。開始から2週間後までの間に、16歳の少女や23歳の女性が路上で撲殺されたり、射殺されたりしている。そして、死者はすでに百数十人にのぼっている。だが、デモで死亡した女性たちは、イランの女性の人権を守るために「究極の犠牲を払った」人々のごく一部に過ぎない。

アムネスティ・インターナショナルによると、イランの治安部隊は9月30日、シースターンバルーチスターン州のザ―ヘダ―ンで行われたデモの参加者や居合わせた市民に向かって実弾を発砲。これにより、子どもを含む少なくとも66人が死亡。数百人が負傷したという。ザーヘダーンではその後も16人が死亡している。
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編集=木内涼子

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