「その通り!」とか「同意!」などと私の言いたかったことをすぐに理解してくれた人もいました。一方で、「収益性の高い企業にしか投資しない」という意味に誤解されやすい内容だったせいか、「それではVCの意味がない」、「VCとして最も言ってはいけないことでは」といった反応もありました。
別のツイートでも紹介したように、Coral Capitalではスペースロボットや次世代電池技術、Govtechなど、様々な「難しい」分野にむしろ幅広く積極的に投資しています。どれも野心的な取り組みですが、成功すれば参入障壁の高い、巨大なビジネスに発展する可能性があり、社会的にも非常に大きなインパクトが期待できるからです。
実際にCoralのポートフォリオを見てみてもわかると思いますが、中短期的には収益性が見込めないようなチャレンジングなビジネスであっても敬遠することなく投資しています。すでに黒字化している企業にのみ投資する方針だったとしたら、私たちの仕事ぶりはお粗末としか言いようがありません!
それでは今回のツイートはどういう意味で言ったのかというと、具体的には2つの意味を含んでいます。
まず1つ目は、「他人が欲しがっているように見えるものが、欲しくなる」という人間の基本的な心理を、資金調達においても考慮せざるを得ないという点です。
多くの心理学者や哲学者によって解説されている心理現象ですが、個人的に特にわかりやすいと思うのが哲学者ルネ・ジラールの「模倣の欲望」理論です。ジラールによると、「人間という生き物は、自らの欲望の対象が本能的にわからず、他者にその答えを求めようとする。他者の欲望を模倣し、他者が欲しがるものを自らも欲しいと思うようになる」そうです。
人間の弱点とも言える本質ですが、投資家からの人気が高そうなスタートアップに飛びつく投資家が多いのもそう考えると説明がつきます。この集団心理のせいで、もうこれ以上お金はいらないというスタートアップにばかり投資家から連絡が殺到するようなことが起こるのです。