Crunchbaseが調査を行ったこの分野の上場企業14社の時価総額の合計は、約2年前に510億ドル(約7.6兆円)強だったが、現在は91億6000万ドルと、約81%も下落している。この中には、IPO以来99%の価値を失ったLiDAR企業のQuanergy Systemsや、97%を失ったクラウドベースの自動車接続ソリューションのOtomo、同じく97%下落した自動運転トラック技術のEmbark Technologiesなどが含まれている。
「投資家は、この分野に匙を投げたようだ」とCrunchbaseのアナリストのジョアンナ・グラスナーは述べた。2019年に人工知能(AI)の専門家たちは、少なくとも特定のユースケースでの完全な自動運転の普及を約束していたが、実際は予想以上の時間がかかっている。
イーロン・マスクは2020年に「今年中に」レベル5の完全な自動運転技術を実現すると約束したが、それは実現せず、同年末にコンシューマー・レポートは、テスラの技術に重大な欠陥があると指摘した。
一方、ロイターはアップルが2024年までに自動運転車を出荷する予定だと報じたが、現時点ではその可能性は極めて低いと思われる。
スケーラブルな事業立ち上げは難しい
私たちがより多くの自動化ソリューションを目にすることができるのは、配達用のドローンや倉庫用ロボットなどの自律型の単一目的のロボットだが、当局が自動運転車や自律走行トラックを承認するためのハードルは、非常に高く設定されている。この分野のテクノロジーは、基本的に、人間よりも優れたものであることが求められる。
自律走行車のトレーニングを手がけるHelm.aiのCEOのVlad Voroninskiは、筆者の取材にこう述べている。
「人間と同等の安全レベルを持つシステムを実現することは、実際にはさほど難しいことではない。しかし、問題は、そのレベルの安全性を達成しても、スケーラブルなビジネスを立ち上げるには十分ではないことだ。本当に必要なのは、人間よりもはるかに安全なシステムで、拡張性が高く、費用対効果が高いものであることが求められる。これらの要件をすべて同時に実現するのは、かなり難しい」
このようなテクノロジーの実現には時間がかかる。そして、「投資家の情熱は長くは続かない」と、Crunchbaseのグラスナーは述べている。
しかし、ほぼすべての自動運転企業の株価が下がっている中で、勝者が居ることにも注目したい。LiDARメーカーのInnovizの株価は、IPO価格から53%下落したが、同社は技術革新を続け、直近では、フォルクスワーゲンから40億ドルで数百万個のセンサーを受注した。
つまり、イノベーションはまだ続いており、顧客を見つけた新興企業には、まだ膨大なチャンスが広がっている。一方で、自動車メーカーにとって今は、新たなテクノロジーと人材を獲得するためのチャンスと言えるのかもしれない。
(forbes.com 原文)