ベラルーシの長年の独裁者であるアレクサンドル・ルカシェンコ大統領はロシアのウラジミール・プーチン大統領と親しい関係にあるが、そのベラルーシから進軍したロシア軍の大隊はわずか約105キロ先のウクライナの首都キーウを目指して南下した。
だがロシア軍はキーウにたどり着かなかった。一般道路や高速道路を進むにつれて戦力は落ちていった。ミサイルを打ち続けるウクライナ歩兵の機動部隊の執拗な攻撃で補給線が絶たれ、ロシア軍は失速し、そして崩れた。その後、ベラルーシに退却し、ロシアはウクライナ東部と南部の前線に軍隊を再配備した。
それから約200日たった現在、第2のロシア軍が表向きはベラルーシに集結している。その理由は不明だ。しかし、もしこの部隊が北方戦線を再開させる計画だとしたら、かなり間抜けな話だ。
10月7日にルカシェンコがプーチンと「ロシア西部国境の状況悪化に関連」してロシアとベラルーシの合同部隊の派遣に合意したことを発表したとき、ウクライナ東部と南部のロシア軍はウクライナの反撃に揺さぶられていた。状況悪化とは明らかにロシア西部の国境近く、ウクライナ北東部のハリコフ州でのウクライナの攻撃を指している。
しかし、ルカシェンコは「部隊配備の範囲を明確に定義しなかった」と米シンクタンクの戦争研究所は指摘している。
発表の4日後、ウクライナ軍の参謀本部は、ロシアとベラルーシが新しい戦闘部隊を編成している兆候を探った。ベラルーシは引き続き、ロシアがベラルーシ空域で戦闘機を飛ばすことを許可していると参謀本部は報告した。しかし「ベラルーシ共和国の領土で攻撃的なグループが形成され、部隊が移動する兆候はみられない」という。
戦争研究所はその後、ロシア国内の兵たん集結地でベラルーシが列車で打撃を受けているロシア軍に武器や装備を移送しているのを確認した。「ベラルーシのロシアへの装備の移送は、ロシアとベラルーシの軍隊がベラルーシに集結地を作っていない可能性が高いことを示している」と戦争研究所は説明している。
ロシアがベラルーシの助けを求める理由は明白だ。ロシア軍は侵攻を開始した2月以降、ウクライナで10万人もの兵士が負傷・死亡し、7000台を下らない戦車や戦闘車両などの主要装備を放棄している。
ロシア軍にほころびが生じている。公式には30万人の徴兵を目指すという、先月から始まった全国での必死の動員で、軍はかえって衰えつつある。徴兵された兵士の多くは高齢で体力がない。英国防省は、徴集兵の装備は「すでに貧弱だった以前配備された部隊の装備よりもほぼ確実によくない」と指摘した。