ロシア政府はこうした準備の整っていない徴集兵を数日の訓練でウクライナに送り込んでいる。徴集兵は前線に到着するやいなや、降伏したり死んだりしている。
しかし、ベラルーシの6万人規模の軍隊はたとえ負傷者が少なくてもロシアの軍隊より優れているわけではない。ルカシェンコは負け戦で自国のわずかな戦闘力を浪費したくないのだろう。
そして天候の問題もある。ウクライナは寒くなるにつれて雨も多くなっている。初冬のぬかるみは攻撃的な軍事作戦には極めて不利だ。ウクライナでの戦争が11月と12月に一旦中断し、1月に地面が凍結した後に再開される傾向があるのには理由がある。もし今、ベラルーシがウクライナに軍隊を派遣したら、その軍隊は2週間ほど好天に恵まれた後に行き詰まるだろう。
ロンドン大学キングスカレッジ戦争研究科のマイク・マーティンは、こうした要因から単純な結論を導き出した。「ロシアとベラルーシはウクライナの北部国境で見せかけの姿勢をとっている」とツイートしている。
ウクライナ軍は旅団を2つの大きな反撃作戦に振り分けているが、どうやら3つ目への配備を計画しているようだ。ウクライナ軍は優秀な部隊を多く持っているわけではない。キーウへのロシアとベラルーシの攻撃が本当の脅威であるという印象を与えるために必要なのは、いくつかの声明と数列車分の弾薬だけだ。そうするとウクライナ側は首都防衛のために予備の部隊を置かざるを得なくなる。その部隊は他の戦線で反撃に参加することができない。
ロシアとベラルーシの表向きの合同部隊について、マーティンは「国境を越えるかどうかは不明だ。いずれにせよ、ウクライナ軍に縛りをかけることになり、意味がある。国境を越えようと越えまいと軍事的な効果がある」と書いている。
ロシア軍は展開されている前線に沿ってかろうじて持ちこたえている。別の戦線を開けば必然的に既存の戦線が手薄になり、敗北を早める可能性が高い。
ロシア軍にとってベラルーシ軍といっしょに北方攻撃をすると匂わせることは、ロシア軍大隊への圧力を軽減することになり、賢明な戦略だ。しかし、実際にベラルーシ軍とともにウクライナ北部への攻撃を開始するのは愚かな行為だ。
だからといって、ロシアがそうしないとは限らない。「ロシアはこの戦争でかなり愚かなことをしており、その可能性を排除することはできない」とマーティンは指摘した。
(forbes.com 原文)