だからこそ、このブランドは特定の車種を宣伝するわけではない、米国の消費者がそもそもなぜトヨタを好きなのかを思い出させるような新しい広告キャンペーンを打ち出すことができる。「Never Settle(ネヴァー・セトル)」は、トヨタが過去10年間、包括的なブランドキャンペーン「Let’s Go Places.(レッツ・ゴー・プレース)」で築いた基盤の上に、多文化主義を活用した延長線上にある。しかし、この新しいキャンペーンのテーマは、実はトヨタのブランドを新しい方法で積極的にするものなのだ。
このキャンペーンは、ヒスパニックや黒人など多様な人々の生活の中で、トヨタのクルマ、そしてそれ以上にトヨタブランドを称える、テレビコマーシャルと関連するオンラインエクステンションからスタートしたばかりだ。
そのうちの1つ「トレーニングホイール」は、ある黒人青年が自転車や水泳、そして空を飛ぶことを学び、その過程で恐れを知らぬよう励まされる様子を描いた広告だ。2つ目のスポット「ノットイェット」は、ヒスパニック系米国人の野心と忍耐に焦点を当て、将来のヒスパニック系米国初代大統領の「クリップ」が含まれている。3つ目のコマーシャル「ア・ニュー・ワールド」は、混血の実際の家族が、トヨタ・シエナで病院から赤ちゃんを連れて帰ってくる様子を描いている。
北米トヨタのトヨタ部門マーケティング担当グループ副社長のリサ・マテラッツォは「このキャンペーンは、トヨタというブランドについて、ストーリーを語り、インスピレーションを与えるメッセージを共有することを目的としています。これまでのキャンペーンである『レッツ・ゴー・プレース』の文脈の中でとてもうまく機能しています」と語った。
トヨタは2012年に「レッツ・ゴー・プレース」を立ち上げ「米国におけるトヨタの前向きで楽観的な勢いを反映しました」と、マテラッツォは言った。このブランドはスーパーボウルからオリンピックまで、さまざまな文脈でキャンペーンを展開してきた。
興味深いことに、トヨタの最新キャンペーンは、哲学としての電動化、あるいはトヨタの車輌の現実として、電動化を打ち出すことなく開始した。25年前にプリウス・ハイブリッドを発表してバッテリー駆動の自動車で早くから先陣を切ったトヨタは、それ以来、世界の自動車産業が全面的に電気自動車に傾倒していく中で、最も注目すべきブランドとして抵抗してきた。
トヨタの豊田章男社長は先日、米国の記者団に対し、温室効果ガス削減のための当面の解決策としてハイブリッド車に引き続き注力し、水素を含むカーボンニュートラル実現のためのさまざまな技術を活用していくというメッセージを繰り返した。また、トヨタはカーボンニュートラルや電動化の選択肢は1つではないと強調した。その理由の1つは、世界中の多様な顧客のニーズに合わないからだ。彼は「誰も置き去りにしたくないのです」という。
マテラッツォは「トヨタは常にお客様の要望を重視しており、電動化のアプローチもそれを考慮したものです。マニュアルトランスミッションのGRカローラから、ハイブリッドのオプションが付いた新型タンドラまで、バラエティに富んでいます。これは、1つの選択肢だけですべての人のニーズを満たそうとするアプローチでは、すぐに消費者に受け入れられないという我々の考えを反映したものです」と説明した。
【お詫びと訂正 2022年10月21日15時】
記事初出時に間違いがありました。正しい文章は以下のとおりであり、修正いたしました。ご迷惑をおかけした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。
8段落目
誤「一方、トヨタは電動化を全面的に採用するつもりはないと強調した」
正「また、トヨタはカーボンニュートラルや電動化の選択肢は1つではないと強調した」
9段落目
誤「一律的なアプローチ(全面的な電動化)では、すぐに消費者に受け入れられないという我々の考えを反映したものです」
正「1つの選択肢だけですべての人のニーズを満たそうとするアプローチでは、すぐに消費者に受け入れられないという我々の考えを反映したものです」
(forbes.com 原文)