これらは、この技術分野の2大ベンチャーキャピタリストであるAir Street Capital(エア・ストリート・キャピタル)のネイサン・ベネイチとPlural(プルーラル)のイアン・ホガースによって導かれた結論であり、彼らのAIの現状に関する年次報告書(state of AI 2022)で概説されている。この報告書は、DeepMind(ディープマインド)の開発から、急速に拡大するNVIDIA(エヌビディア)の処理能力まで、AIのあらゆる面をカバーしている。また、ビジネスの観点からも、AIに対する数多くの示唆が含まれている。
ともあれ、2021年はAIビジネス分野の当たり年だったが、その後2022年は軟調に推移した。2022年におけるAIを利用したスタートアップへの投資は、市場全体とともに減速している。AIを活用する民間企業の2022年の資金調達額は前年比36%減となる見込みだが、それでも2020年の水準を上回る勢いだ。「これは、世界中のスタートアップやスケールアップ(スタートアップ段階を脱して急成長中の企業のこと)の投資額に匹敵するものだ」と彼らは見ている。さらに彼らは「エンタープライズソフトウェアが世界的には最も投資されているカテゴリーだが、AIへのVC投資ではロボットが最大のシェアを獲得している」と指摘している、
同時に、AIを活用するSaaSスタートアップやスケールアップへの投資も、極端ではないものの軟化しており、今年は昨年比33%減の415億ドル(約6兆1700億円)で終わると予想されている。それでもこれは、2020年のAI SaaSスタートアップやスケールアップへのVC投資と比較して高い水準だ。
重要なことだが、報告書の著者たちは、複数年にわたるプロジェクトの資金調達が終了するにつれて、AIの学術研究も終わりつつあり、研究の多くが現在商用セクターに移行していると述べている。すなわち、より多くのスタートアップやスケールアップがこの先浮上してくるということだ。ベネイチとホガースは「かつて産業界からは手出し出来ないと考えられていた最先端AIラボの人材が、自由になり起業するようになっています」と述べている。「そうした輩出人材が、AGI(汎用人工知能)、AI安全、バイオテクノロジー、フィンテック、エネルギー、開発ツール、ロボットに取り組んでいます」